低コストでCO2を分離回収可能な化学吸収法技術の開発
日本製鉄株式会社
概要
COURSE50プロジェクトでは、製鉄所からのCO2排出量を、水素還元により10%、CCSにより20%、合計30%削減することを目標としている。排ガス中のCO2を分離回収する技術の中で、化学吸収法は、高炉や火力発電等の大規模排出源に適した手法である。CO2分離回収技術はCCSやCCUの共通要素技術であるため、その技術向上によるCO2分離回収コストの削減は、CCSやCCUの社会実装と普及を促進する上で極めて重要である。本技術開発では高性能の新吸収液を開発し、CO2分離回収エネルギーを削減することで、CO2分離回収コストの大幅低減を目指す。また、工場内の未利用排熱を活用した分離回収コストの削減も視野に入れ、より低温で再生(CO2放散)可能な吸収液を開発する。
説明
a)チャレンジにおける到達目標
化学吸収法は、アミン水溶液等の吸収液を排ガスと接触させ、化学反応によりCO2を選択的に吸収した後、120℃程度まで加熱してCO2を放出させ、回収するプロセスである。化学吸収法のCO2分離回収コストは、吸収液の再生(CO2の放散)工程に要する熱エネルギーのコストがその過半を占めており、そのエネルギー量は吸収液の組成に大きく依存する。水溶液系の吸収液については、すでに世界最高水準の約2.3 GJ/tCO2まで低減したRN吸収液を開発し、日鉄エンジニアリングのCO2分離回収システムESCAPとして実用化されている。本技術開発では、その成果をベースに、さらに非水溶媒や触媒等を積極的に利用することで分離回収エネルギーを極限まで低減し、理論限界に肉薄した1.6 GJ/tCO2を達成目標とする。
b)チャレンジ実現に向けて克服すべき課題
上記の熱エネルギーは、主として吸収液の昇温熱とCO2吸収反応の反応熱である。前者を低減するために、水よりも比熱が小さな非水溶媒の利用を検討する。一方、後者を低減することはCO2との反応性を下げることになるため、必然的にCO2吸収速度が低下し、大きな吸収塔が必要となってしまう。即ち、反応熱と吸収速度のトレードオフを克服することが、吸収液開発の大きな課題である。
c)当社の強みと具体的なアクション
そこで、本技術開発では触媒を利用することにより、反応熱の低減に伴うCO2吸収速度の低下を補償することを検討する。その様なコンセプトで設計された吸収液は、従来よりも更に低温で再生可能な特性を合わせ持つことも期待できる。
d)チャレンジが実現した場合の定量的な効果
上記目標を達成すれば、化学吸収法のCO2分離回収コストを2000円/tCO2以下に低減できる。そして、CCSやCCUの導入における経済合理性をより高めることができる。
連携先
COURSE50、公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)、経済産業省、日本鉄鋼連盟、日鉄エンジニアリング