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パワーデバイスの信頼性向上貢献する、高熱伝導窒化ケイ素基板

日揮ホールディングス株式会社

概要

パワーデバイスの心臓である半導体素子は、セラミックス基板上に搭載され回路に組み込まれますが、半導体から発生する熱を効率的に外部へ逃がさないと半導体がその機能を果たすことができません。そのため、現在、熱の発生量の大きいパワーデバイスには、熱伝導性の高い窒化アルミニウムセラミックス基板が採用されています。

しかし、パワーデバイスの高出力化により、半導体から発生する熱量が増加し、かつ自動車の電動化などの進行により、パワーデバイス自体の信頼性向上が求められるようになったことから、熱伝導性が高いだけでなく、強度の向上もセラミックス基板に求められるようになってきました。

この課題を解決する方法として、日揮グループの機能材製造事業会社である日本ファインセラミックス株式会社(JFC)は、国立研究開発法人産業技術総合研究所と共同で、強度の高い窒化ケイ素基板の熱伝導性を向上させる技術を開発しました。この技術を用いて、現在、JFCは、熱伝導率90W/m・Kを超える窒化ケイ素基板の量産に向けた設備投資を進めています。

説明

再生可能エネルギーへの転換や自動車の電動化、高速鉄道の普及が加速度的に進んでいることから、エネルギーである電気量を制御するパワーデバイスにかかる負荷が増大し、その心臓部品である半導体素子から発生する熱も増加しています。熱は半導体機能を阻害することから、パワーデバイスでは、その放熱あるいは冷却機構に工夫が施されています。ただし、半導体素子は絶縁体としてのセラミックス基板上に設置されることから、放熱あるいは冷却する場合、熱伝導媒体としてセラミックス基板の熱伝導性の向上は、大きな課題となっています。

現在、熱伝導性の高いセラミックス基板としては、主に窒化アルミニウムが用いられていますが、熱応力による信頼性低下が課題となっています。また近年、パワーデバイスの小型化軽量化により、半導体素子が集中配置され熱の発生源が集中することから、より放熱性が高く信頼性の高い、セラミックス基板が求められるようになっています。さらに、半導体素子は、デバイス性能向上の要請に応えるため、その素材がシリコンから炭化ケイ素に変わりつつあり、炭化ケイ素製半導体素子は、より高温域で用いられることから熱応力も大きくなります。こうしたことから、これらの要求に応えることができるセラミックス基板の必要性が、近年ますます高まってきていました。

この課題に対し、JFCは、強度・信頼性が高い窒化ケイ素セラミックスに着目し、この熱伝導性の向上を、国立研究開発法人産業技術総合研究所と共同で研究開発を行ってきました。その結果、熱伝導率130W/m・Kの窒化ケイ素基板の製造技術の開発に成功し、2015年度から量産パイロットプラントを立ち上げて量産技術の確立を進め、現在、熱伝導率90W/m・Kの窒化ケイ素基板をターゲットにした量産工場の建設を進めています。

本基板は、自動車向けデバイスを中心に採用が進んでいることから、今後の自動車電動化の進展に大きく寄与しCO2削減に貢献できる、と考えています。JFCは、さらに熱伝導性能を向上させた窒化ケイ素基板量産技術の確立も進めており、より省エネルギー効果が高い炭化ケイ素製半導体の普及に貢献することを目指しています。

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