CO2回収に適した次世代火力発電(酸素吹IGCC)の実現
電源開発株式会社
概要
再生エネルギーの拡大が世界的規模で進んでいるものの再エネや原子力だけでは電力需要をまかなうことはできず、日本および世界で今後も石炭が必要とされる中、J-POWERでは石炭利用の脱炭素化が極めて重要と考えている。
特に石炭をガス化したガスを燃焼するガスタービンと、ガスタービンの排熱を利用する蒸気タービンの2種類の発電形態を組み合わせて複合発電を行うことができる石炭ガス化複合発電(IGCC)システムは発電効率が高い(57%-発電端・低位発熱量基準)ためCO2排出量を抑制できるほか、石炭からガスを生成する際に酸素を使用する酸素吹IGCCは、生成ガス中の一酸化炭素(CO)濃度が高いため効率的にCO2として分離・回収できることから、CCUSに最適の発電技術である。
J-POWERは酸素吹IGCC/IGFCの実証事業である大崎クールジェンプロジェクトで得た知見をもとに、酸素吹IGCCの商用化を実現することで、石炭火力の低炭素化、脱炭素化を目指す。
説明
J-POWERは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との共同研究事業者として、2002年度より酸素吹IGCCの実現に向けた技術確立を目的としたEAGLEプロジェクト(J-POWER若松研究所で実施した酸素吹き石炭ガス化プロジェクト Coal energy application for gas, liquid & Electricity)を推進してきた。
その後、EAGLEプロジェクトで得られた知見と成果を活かし、NEDOの助成を受け、中国電力(株)と共同で大崎クールジェンプロジェクトを推進していく。同プロジェクトでは、既に第1段階として酸素吹IGCCの実証試験(出力:16.6万kW、石炭使用量:1,180t/ 日)を2019年2月に完了、2019年12月より第2段階として酸素吹IGCCにCO2 の分離回収設備を組み込んだCO2分離・回収型IGCCの実証試験を開始している。また、2019年3月より第3段階としてCO2分離・回収型IGFCの実証事業に着手した。
酸素吹IGCCは、石炭をガス化したガスを燃焼するガスタービンと、ガスタービンの排熱を利用する蒸気タービンの2種類の発電形態を組み合わせて複合発電を行うことで、発電効率が高く(57%-発電端・低位発熱量基準)CO2排出量を抑制できるほか、石炭からガスを生成する際に酸素を使用する酸素吹IGCCは、生成ガス中の一酸化炭素(CO)濃度が高いため効率的にCO2として分離・回収できることから、CCUSに最適の発電技術である。また、酸素吹ガス化炉は石炭から高効率で水素を製造することができることから、水素社会の実現に寄与することも期待される。
大崎クールジェン第1段階の酸素吹IGCC実証の成果として、17 万kW 級規模の実証プラントとしては世界最高レベルの性能となる発電端効率51.9%(低位発熱量基準)※1を達成し、1500℃級ガスタービンを採用する商用機(石炭処理量2,000~3,000t/d)での発電端効率約57%(低位発熱量基準)※2達成の見通しが得られた。これにより、CO2の排出量を超々臨界圧微粉炭火力(USC)と比べて15%程度削減することが期待できる。
また、プラント制御性・運用性については、目標を大幅に上回る負荷変化率最大16%/分を達成するとともに、送電端出力0MWでの安定運転を確認し、発電出力を機動的に制御することが可能であることを確認した。これにより、導入拡大が進む再生可能エネルギーなどの急激な出力変動に対応する電源としても活用できる運用性の高さが実証できた。
そして、第2段階では、酸素吹IGCC実証試験設備とCO2分離・回収設備を組み合わせたCO2分離・回収型酸素吹IGCCの石炭火力システムとしての基本性能やプラント運用性・信頼性、経済性を検証する。CO2回収時のエネルギーロスによる発電効率の低下という課題に対し、実用化後の商用発電プラント(1500℃級IGCC)に換算して、IGCCでガス化したガス全量に対してCO2を90%分離・回収しながら、現状で最新鋭微粉炭火力発電方式と同等レベルの送電端効率の達成見通しを立てることを目標としている。
さらに、国内初となる石炭火力から回収したCO2を資源として多様な用途に有効利用するカーボンリサイクルの実証に向け検討を進めている。具体的には、第2段階から回収したCO2を液化・輸送し、J-POWERが北九州市でカゴメ株式会社と共同運営しているトマト菜園や微細藻類からバイオ燃料を生産する研究、中国電力などが開発した環境配慮型コンクリートなどを想定して、CO2の有効利用の可能性を検討している。
J-POWERは、大崎クールジェンプロジェクトの成果を元に、プラントのスケールアップによりさらなる高効率化を図れる酸素吹IGCCの商用化を実現し、石炭火力からのCO2の排出の削減を図り、加えてCCUS/カーボンリサイクルと組み合わせることで、石炭火力の脱炭素化を目指す。
※1 送電端効率40.8%(高位発熱量基準)
※2 送電端効率約46%(高位発熱量基準)
連携先
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
中国電力株式会社
大崎クールジェン株式会社
株式会社日立製作所
補足情報
大崎クールジェン株式会社HP
https://www.osaki-coolgen.jp/