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2050年ゼロエミッションを目指して

日本航空株式会社

CO2削減の推移と目標

国産初のバイオジェット燃料製造工程

事業性調査参画企業の役割

概要

 JALグループは、数ある社会課題の中でも、気候変動への対応が特に重要な課題であると認識しており、企業の責務として、CO₂排出量の削減への対応を着実に進めてまいります。 航空業界では、国際民間航空機関(ICAO)において、2010年に「燃料効率を毎年2%改善すること」、および「2020年以降国際線のCO₂総排出量を増加させないこと」、そして2016年には、2021年以降、国際線を運航する航空会社に対し、2019年のCO₂排出量を超過した分についてCO₂排出権の購入などを義務付けるCORSIA制度(Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation:国際航空のためのカーボンオフセット及び削減スキーム)の導入を採択し、気候変動への対応を進めています。JALグループは2020年6月、新たな長期目標として2050年度までにCO₂排出量実質ゼロを目指す、「ゼロエミッション」を発表いたしました。

 この目標の達成に向け、「省燃費機材への更新」、「バイオジェット燃料の開発促進と活用」、「日々の運航での工夫」、「排出量取引への対応」の4つを大きな柱とし、CO₂排出量の削減に取り組んでまいります。

 

説明

 具体的な取り組みは以下のとおりです。

省燃費機材への更新

 JALグループでは環境負荷低減のため、省燃費機材への更新を進めています。2019年9月には国内線にエアバスA350型機が就航、さらに、2012年から国際線に就航していたボーイング787型機を、2019年10月より国内線にも就航させました。これらの機材は省燃費かつ低騒音であり、従来機と比較してCO₂排出量を15~25%程度削減することができます。JALグループは今後とも計画的に新型機への更新を進めてまいります。

バイオジェット燃料の開発促進と活用

 航空業界ではこれまで、使用燃料の削減という観点からCO₂削減に取り組んできましたが、今後さらに削減するためには、使用する燃料自体の質を変える必要があります。欧米を中心とした世界各国ではバイオジェット燃料の開発や実用化が進められており、2030年以降の本格的な普及が予想されています。このような流れの中で、JALグループとしてもバイオジェット燃料利用のリーディングエアラインとなるべく、定期便での利用や積極的な投資と実用化に向けてステークホルダーとの協働を進めています。具体的には、2009年にアジア初の非可食原料によるバイオジェット燃料を用いた試験飛行を実施し、また、2017年11月にシカゴ・オヘア国際空港から成田空港、2019年1月にサンフランシスコ国際空港から羽田空港にバイオジェット燃料を搭載して運航をしました。そして、2019年6月以降、エアバスA350型機の受領に際し、フランス・トゥールーズのエアバスの工場から羽田空港までのデリバリーフライトにはバイオジェット燃料を使用しています。

 バイオジェット燃料への投資としては、2018年9月に、株式会社海外交通・都市開発事業支援機構および丸紅株式会社と共同で、米国カリフォルニア州にあるFulcrum BioEnergy, Inc.(以下、フルクラム社)の株式の一部を取得しました。バイオジェット燃料製造事業への出資としては、日本企業で初めての案件となります。フルクラム社は、通常は埋め立てて廃棄される一般廃棄物を原料としてバイオジェット燃料を製造するプロセスの開発に取り組んできました。製造技術は国際標準化・規格設定機関であるASTM Internationalによる燃料規格も取得しています。現在、ネバダ州に第1号プラントを建設中であり、2020年度中に建設が完了する予定です。さらにインディアナ州での建設計画を発表するなど、今後も複数のプラントの展開を予定しており、バイオジェット燃料の大量生産について、実現性が最も高い企業の一つです。そのため、JALグループとしても、フルクラム社との関係を強化し、北米発便を中心に同社から供給されるバイオジェット燃料の搭載を進め、CO₂排出量削減を実現していきます。

 国産バイオジェット燃料導入に向けた取り組みとしては、日本政府が設置した「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けたバイオジェット燃料の導入までの道筋検討委員会」(通称:道筋検討委員会)のメンバーの一員として、政府の掲げる2030年の国産バイオジェット燃料普及の達成に向け、さまざまなステークホルダーをつなぎ、製造から使用までのサプライチェーン整備に、オールジャパンの一員として貢献しています。 その一環として、全国から集めた衣料品(綿)を原料に国内の既存施設を活用して国産バイオジェット燃料の製造に試みるプロジェクトを2018年10月から実施し、2020年3月下旬に製造に成功しました。世界的にはバイオジェット燃料の実用化が進んでいるものの、国産バイオジェット燃料の完成は国内で初めてのことです。このプロジェクトでは、まず2018年の衣料品回収期間中(約3か月間)に約50社の企業にご協力いただき、全国から約25万着を集めました。その後、2019年1月より、バイオベンチャーであるGreen Earth Institute株式会社とともに、公益財団法人地球環境産業技術研究機構が開発したバイオプロセスを使用し、集まった衣料品(綿)からバイオジェット燃料を製造しました。この成功により、国内の技術力でバイオジェット燃料の製造が可能であることを立証することができました。

 このほか、2020年2月より丸紅株式会社、ENEOS株式会社、日揮株式会社、大成建設株式会社、株式会社タケエイと、代替航空燃料の製造・販売事業に関する事業性調査を開始しました。廃棄プラスチックを含む産業廃棄物・一般廃棄物等を原料とし、代替航空燃料を製造、販売するサプライチェーンの実現性につき事業評価を行っています。その後、本調査の結果を踏まえ、2020年代前半に実証設備の導入および試験の実施、2025年頃に商用機の着工を目指します。

日々の運航での工夫

 日々の運航の中においては、安全運航の堅持を大前提に、運航中の運航乗務員による操作のタイミングや選択の工夫によるエコ・フライトの取り組みをはじめとして、運航する機体の軽量化や定期的なエンジン内部の洗浄による燃費の向上など、各職場でさまざまな工夫を行い、状況をモニターし、進捗を社内で共有することで、CO₂排出量削減に向けたPDCAサイクルを組織横断的に推進しています。この他にも、グローバルな次世代管制システムへの対応や、運航実績データに基づく日々の消費燃料の振り返りが可能な仕組みの構築など、新たな技術や手法を取り入れ、更なる削減を目指してまいります。

排出量取引への対応

 CO₂クレジットは、航空以外の業態で抑制されたCO₂排出量を購入するもので、地球全体で効率的にCO₂排出量の削減を行うことを目指すものです。JALグループでは今後上記クレジットの選定、購入を行う上で、航空以外の業界とも力をあわせ、CO₂排出量の削減を行っていきます。

 

 以上、4つの柱の下、他業種を含めたステークホルダーとの協働を通じ新たな技術を積極的に取り入れることにより、2050年のCO₂排出量実質ゼロの実現に果敢に挑戦してまいります。

 

連携先

株式会社海外交通・都市開発事業支援機構

丸紅株式会社

Fulcrum BioEnergy, Inc.

Green Earth Institute株式会社

公益財団法人地球環境産業技術研究機構

ENEOS株式会社

日揮株式会社

大成建設株式会社

株式会社タケエイ

  

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