スマートエネルギーネットワーク
東京ガス株式会社
概要
スマートエネルギーネットワークは、ガスコージェネレーションシステム(コージェネ)などの分散型エネルギーシステムにより、熱と電気を融通する面的なネットワークを構築し、需要側と供給側が双方連携により地域全体としてエネルギー使用量の最小化を図っていくもの。ソフト面ではICTを活用して、地域内外のさまざまな情報の収集・分析を行い、建物や地域のエネルギーを賢くマネジメントしていき、その土地ならではの再生可能・未利用エネルギーを積極的に活用し、コージェネによって安定するように調整を図ることで再生可能・未利用エネルギーの更なる有効活用が可能となる。また、災害時の停電等にも、信頼性の高い中圧ガス供給によるコージェネにより、熱や電気を地域に供給することも可能でレジリエンス性も高い。
説明
建物単体では、ネット・ゼロ・エネルギー化を図るZEB施策が行われているが、都心部での再生可能エネルギー導入の限界等、大規模ビルでの達成が難しい状況である。しかし、大都市政策は更に進んでおり、都心部では、熱需要が高く、また帰宅困難者対策など、災害時における都市の防災対策が喫緊の課題となっており、スマートエネルギーネットワークのような地域単位でのエネルギーマネジメントシステムの構築は災害時にも電気・熱の供給を可能にし、都市の防災力強化にも非常に有効であると考えられる。
具体的なスマートエネルギーネットワークの構築には、分散型電源や利用可能な最大限の未利用エネルギーと再生可能エネルギーを活用し、安定的かつ効率的なエネルギー運用を行っている。さらに、需要側(建物)と供給側(プラント)をICTによる情報ネットワークにより連携し、季節、天候、前日データ、イベントデータ、各機器の設定情報等と需要側の稼働状況から、最適なエネルギー需給運用を想定し、需要と供給の最適化を実現する。これによりプラントだけでなく、地区全体として低炭素・省エネルギー化を目指している。
2014年に竣工した田町駅東口北地区での一体再開発モデルのスマートエネルギーネットワークの構築を皮切りに、豊洲埠頭地区、そして既存市街地も巻き込んだ日本橋室町地区で実現している。産業用部門では、清原工業団地も新たに竣工している。田町のⅠ期では、2015年実績として、約40%のCO2削減(2013年省エネ基準相当の建物群と比較)を達成している。
このようなモデルの実現には、まちづくりの早期段階からの実現可能性の検討や都市政策等との連携を図っていく必要がある。また、スマートエネルギーネットワーク構築にあたっては、ランニングコストメリットのみで回収できるような構築費用では賄なうことは難しいため、自治体との官民連携や、スマートエネルギーネットワーク構築による環境性や防災性、地域活性化等の価値の評価を明確化し、各ステークホルダー間で価値の共有、分配を行う仕組みを作ることで実現化が多く図られ、ネットゼロカーボン社会への礎となると考えている。