CO2を再資源化する新規バイオプロセスの開発
中国電力株式会社
概要
石炭・石油火力発電は我が国のエネルギー・発電供給量の4割強を占めていますが,排出されるCO2は削減対象とされる温室効果ガスの大半を占めていて,リサイクル技術の確立が喫緊の課題となっています。
本事業では,暗所で高速・高密度培養が可能な複数の微生物を組み合わせた複合発酵法を確立して,発電排出ガス(Gas)から燃料や化成品の原料油脂(Lipids)を生産することによりCO2を再資源化する新規バイオプロセスの開発を目指します。
説明
本技術は,ホモ酢酸菌(Acetobacterium woodii)とオーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)の二種類の微生物の発酵を伴うことから二段階発酵システムと呼び,CO2(Gas)から油脂を生産することからGas-to-Lipidsと呼びます。
当該二段階発酵システムの第一段では,火力発電所から排出するCO2を固定化して酢酸を生成するホモ酢酸菌を利用します。ホモ酢酸菌は酢酸だけを最終生成物として排出し,CO2と水素から酢酸を生成します。CO2から酢酸への変換効率が高く,CO2固定化微生物触媒として非常に有望です。
次に,第二段発酵槽ではオーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)を用います。第一段発酵で得られた酢酸をオーランチオキトリウム培養槽に供給すると,オーランチオキトリウムは酢酸を栄養源として長鎖飽和脂肪酸,高度不飽和脂肪酸およびカロテノイドなど燃料に加え,化粧品や健康食品などの原料として有用な脂質を細胞内に蓄積します。
こうして二段階発酵を通して完成した油脂は,燃料,化粧品や健康食品などの幅広い製品の原料として活用できる可能性があります。
○チャレンジ実現に向けて克服すべき課題や具体的なアクションについて
・ ホモ酢酸菌発酵設備をスケールアップした時の酢酸生成の達成を目指します。
・ 生成した酢酸のオーランチオキトリウム発酵による油脂生成の達成を目指します。
・ H2-CO2供給→酢酸生産→油脂生産までの一貫製造プロセス構築の検証を行います。
※ 具体的な数値については,今後の研究開発の取組みの中で決めていきます。
○CO2削減効果等
・ 仮に40万トンの燃料油が生産された場合,原料CO2の再資源化量は112万トンに達すると見込まれます。
・ 出願済み国際特許の活用により,中国等で急増する火力発電所からの排ガスに当技術を適用できれば,世界標準技術としてのグローバルな展開も期待されます。
連携先
国立大学法人広島大学,出光興産株式会社
補足情報
経済産業省「カーボンリサイクル技術事例集」P36を参照
https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/carbon_recycling/tech_casebook/