究極の高効率石炭火力発電(IGFC)の実証開発
中国電力株式会社
概要
中国電力は,究極の高効率石炭火力発電技術である石炭ガス化燃料電池複合発電(以下IGFCという)とCO2分離・回収技術を組み合わせた,ゼロエミッション石炭火力発電の実現を目指す大崎クールジェンプロジェクトの取り組みを通じて,石炭火力の低炭素化,脱炭素化に貢献していきます。
本プロジェクトは3段階で構成され,第1段階では,IGFCの基盤技術である「酸素吹石炭ガス化複合発電(以下酸素吹IGCCという)」の大型設備実証試験を行い,第2段階では酸素吹IGCCにCO2分離回収設備を付設した「CO2分離・回収型酸素吹IGCC」,第3段階ではさらに燃料電池を付設した「CO2分離回収型IGFC」の実証を計画しています。
これらの取り組みは,経済産業省が策定した次世代火力発電に係る技術ロードマップに基づき,2012年度から経済産業省補助事業,2016年度から国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)助成事業として,電源開発(株)と共同で実施しています。
説明
第1段階では,酸素吹IGCCの石炭火力システムとしての基本性能やプラント運用性・信頼性,経済性を検証します。
酸素吹IGCCは,石炭をガス化したガスを燃焼するガスタービンと,ガスタービンの排熱を利用する蒸気タービンの2種類の発電形態を組み合わせて複合発電を行うことで,発電効率が高く,CO2排出量を抑制できるほか,石炭からガスを生成する際に酸素を使用する酸素吹IGCCは,生成ガス中の一酸化炭素(CO)濃度が高いため効率的にCO2として分離・回収できることから,CCUSに最適の発電技術です。
第1段階の酸素吹IGCC実証の成果として,17 万kW 級規模の実証プラントとしては世界最高レベルの性能となる送電端効率40.8%(高位発熱量基準,以下HHV)を達成し,1500℃級ガスタービンを採用する商用機(発電出力50万kW規模)での送電端発電効率約46%(HHV)達成の見通しが得られました。これにより,現在普及している超々臨界圧微粉炭火力(USC)と比べて,CO2の排出量を15%程度削減することが期待できます。
プラント制御性・運用性については,目標を大幅に上回る負荷変化率最大16%/分を達成するとともに,送電端出力0MWでの安定運転を確認し,発電出力を機動的に制御することが可能であることを確認しました。これにより,導入拡大が進む再生可能エネルギーなどの急激な出力変動に対応する電源としても活用できる運用性の高さが実証できました。
そして,第2段階では,酸素吹IGCC実証試験設備とCO2分離・回収設備を組み合わせたCO2分離・回収型酸素吹IGCCの石炭火力システムとしての基本性能やプラント運用性・信頼性,経済性を検証します。CO2回収時のエネルギーロスによる発電効率の低下という課題に対し,実用化後の商用発電プラント(1500℃級IGCC)に換算して,IGCCでガス化したガス全量に対してCO2を90%分離・回収しながら,最新鋭微粉炭火力発電方式と同等レベルの送電端効率の達成見通しを立てることを目標とします。
第3段階では,CO2分離・回収型石炭ガス化複合発電設備に燃料電池を組み込んだCO2分離・回収型石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)システムの実現に向けた実証を行います。
IGFCシステムの実証は世界初の取り組みであり,本プロジェクトでは第2段階までで建設したCO2分離・回収型酸素吹IGCC実証設備に燃料電池を組み合わせて石炭ガス化ガスの燃料電池への適用性を確認します。50万kW級の商用機に適用した場合に,CO2回収率90%の条件で送電端効率47%(HHV)達成の見通しを得ることを目標とします。
さらに,国内初となる石炭火力から回収したCO2を資源として多様な用途に有効利用するカーボンリサイクルの実証に向け検討を進めています。具体的には,第2段階設備から回収したCO2を液化・輸送し,電源開発(株)が北九州市でカゴメ株式会社と共同運営しているトマト菜園や微細藻類からバイオ燃料を生産する研究,中国電力などが開発した環境配慮型コンクリートなどを想定して,CO2の有効利用の可能性を検討します。
連携先
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
電源開発株式会社
大崎クールジェン株式会社
補足情報
大崎クールジェン株式会社HP
https://www.osaki-coolgen.jp/