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"ごみ”を"エタノール"に変換する世界初の革新的生産技術の確立

積水化学工業株式会社

概要

積水化学工業株式会社と米国LanzaTech社は、“ごみ”をまるごと “エタノール”に変換する生産技術の開発に、世界で初めて(※1)成功した。ごみ処理施設に収集されたごみを一切分別することなくガス化し、このガスを微生物により、熱・圧力を用いることなくエタノールに変換することで、既存プロセスに比べ十分に競争力のあるコストでの生産を実現・実証した。大量に存在しながらその工業利用が極めて困難であった“ごみ”を、化石資源に替わる資源として使いこなすことを実現した、革新的な成果である。

説明

1.社会的背景
日本で排出される可燃性ごみは、実に年間約6,000万トン(※2)であり、そのエネルギー量はカロリー換算で約200兆kcalにも達する。この量は日本でプラスチック素材を生産するのに用いられる化石資源(年間約3,000万トン ※3 、約150兆kcal)に比べて十分に大きな量であるにもかかわらず、その再利用は一部に留まり、多くは焼却・埋立処分されているのが現状である。雑多・不均質であり、含まれる成分・組成の変動が大きいという“ごみ”の“工業原料としての扱いにくさ”が、その再利用を強く阻んできたといえる。

2.実証した成果
当社は、埼玉県寄居町にごみ処理施設を有するオリックス資源循環株式会社の協力を得て、その構内にパイロットプラントを建設、2014年より3年間の開発を経て、実際に収集した“ごみ”を、極めて高い生産効率で“エタノール”化することに成功した。(図1)

3.技術確立のポイント
また、当社とLanzaTech社は、“ごみ”の雑多・不均質であり、含まれる成分・組成の変動が大きいことによる、扱いの難しさを解決するために、次の(1)~(3)の各要素技術を具現化した。(図2)

(1)雑多なごみを化学的組成が単一の原料に変換する技術として「ガス化」を採用
「ガス化」は低酸素状態でごみを分子レベル(CO、H2)にまで分解する方法であり、既に確立された技術で、ごみが有するエネルギーを損なうことなく、特性を均質化することができる。

(2)「微生物触媒」によるエタノールの生産と、「ガス精製技術」の確立
「微生物触媒」は熱・圧力を用いることなく、目的とする物質を生産することができる先進的な触媒技術。ランザテック社が保有する微生物は、原生微生物の10倍以上もの反応速度を有し、工業レベルに十分な生産速度を発現できることが特長である。しかしながら“ごみ”から得られたガスは、多くの夾雑物質を含んでおり、そのままでは微生物触媒に用いることはできないので、下記2点の「ガス精製技術」の開発により、微生物触媒の利用を可能にした。ここが最大のブレークスルーポイントである。
① ガスに含まれる夾雑物質(約400種)の特定と精製
② 夾雑物質の状態をリアルタイムでモニタリングしながらプロセスを効率的に駆動する制御技術

(3)ごみ中の成分変動に調整してエタノールを生産する「培養コントロール技術」
ごみに含まれる成分や組成が大きく変動することが、ごみの工業利用が不可能とされてきた大きな要因のひとつで、これを克服するために、下記2点の技術を確立した。
① 組成変動に応じて微生物の生育状態を調整し、活性を一定に維持
② ごみ処理施設特有のあらゆるリスクに対応できる技術を確立(緊急ガス停止時にも対応可能、等)

4.将来の姿
20世紀に大きく発展を遂げた石油化学産業は、現代社会に欠かせない存在となっている。私達の生活を豊かにしてくれている化学製品群(電子/電化製品・自動車・医薬・日用品、等)の多くは、石油・天然ガス等の化石資源から生産される有機化学素材により構成されている。しかしながら、化石資源はあくまで有限であり、地球温暖化等の環境問題を引き起こすリスクもはらんでいる。
本技術で生産する“エタノール”はそれ自身が最終製品として年間75万kL程度の大きな市場を有するのみならず、石油化学製品の6割程度を占める“エチレン”と同様の構造である“C 2 構造”を持つことが特徴であり、既存化学プロセスの活用でエタノールをエチレンモノマーやブタジエンモノマーに変換することで、身近なプラスチック等の有機化学素材に誘導することが可能である。これにより、ごみの再利用による化石資源の代替のみならず、サステナブルな社会の構築のほか、全国各地での新たな産業創出(地方活性化)や、炭素の固定化効果による大幅なCO2排出抑制に貢献できると考えている。
ごみからエタノールを生産する本技術は、まさに“ごみ”を“都市油田”に替える技術ともいえ、当社は、本技術の普及を図ることで、ごみからプラスチック等の生産ができるようになることによる「化石資源に依らない究極の資源循環社会システムの創生」を期待している。(図3)

※1 2017年11月現在、当社調べ
※2 出典:環境省『廃棄物の広域移動対策検討調査及び廃棄物等循環利用量実態調査報告書』をもとに当社にて試算
※3 出典:プラスチック循環利用協会『プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況』

連携先

米国LanzaTech(本社:米国イリノイ州、CEO:Jennifer Holmgren)
オリックス資源循環株式会社(本社:東京都港区)

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