鉄鋼スラグ製品を活用した海域環境改善技術開発
JFEホールディングス株式会社
概要
【JFEスチール(株)】
山下公園前海域は、海底は泥に覆われ、夏場は赤潮発生・貧酸素化となるなどの問題が生じています。そこで、JFEスチール(株)は、生物付着基盤や底質改善の効果が期待される鉄鋼スラグ製品を沿岸域に設置し、海域の生物生息環境の改善手法を横浜市と共同で検討しました。
研究名:「山下公園前海域における水質浄化能力の回復に向けた生物生息環境の改善手法」に関する共同研究
説明
山下公園前の海域にJFEスチール(株)の鉄鋼スラグ製品を設置し、約4年半にわたって調査を実施しました。その結果、下記の知見が得られました。
・生物付着基盤材料「マリンブロック®」、「マリンロック®」、底質改善材「マリンストーン®」による生物多様性の回復。
・ろ過食性動物生息促進による水質改善。
・水質が改善し、貝、魚等の多様な生物が生息。
・水質浄化能力は1日あたり8500kLと想定(平成28年1月調査時点)。
・マリンブロック製造時のCO2固定量=140kg/m3 (例)
これらの結果から、炭酸ガスを製鋼スラグに吸収させた「マリンブロック®」などの鉄鋼スラグ製品が、生物付着基盤や海域環境改善材として有効に機能することを明らかにしました。
今後も横浜市と連携して横浜の海の環境改善と海辺の賑わうまちづくりに向けた取り組みを進めます。
今回の試験で使用した「マリンストーン®」は、鉄鋼スラグを粒度調整して製造した製品で、閉鎖性海域のヘドロ状底質からの硫化水素の発生を抑制し、生物が生息できる環境に改善するなど海の豊かさを守る機能があります。その優れた効果が評価され、第12回エコプロダクツ大賞の農林水産大臣賞および第26回日経地球環境賞優秀賞を広島大学と連名で受賞しました。
また、「マリンストーン®」は広島県に「福山港港湾海域環境創造工事(内港地区)」に採用され、3万8,000トンが施工されました。施工から4年目となる2019年も効果継続が確認されています。
今後もJFEスチール(株)は上記スラグ製品でブルーカーボン生態系の構築に貢献する技術の開発に取り組んで参ります。たとえば「マリンブロック®」のCO2吸収量と強度を同時に改善することは現在の技術では限界があります。そのため、成形中の気孔構造と鉱物組織を制御することで、製品強度向上による海中での耐久性向上と製造時のCO2吸収量増大を両立する技術の開発を図ってまいります。
連携先
横浜市