褐炭ガス化によるCO2フリー水素の製造
電源開発株式会社
概要
政府が取りまとめた水素基本戦略においては、2030年までに30万トン、2050年には1,000万トンの水素の利用が掲げられている。水素の製造方法は様々あるものの、ある程度の量を安く製造するという点では、国内のみならず海外での水素製造が必要になる。
当社は未利用となっている資源(褐炭)に着目し、その資源を有効活用することを目的として、褐炭からの水素製造の研究開発を実施している。褐炭のガス化には、当社が以前より取り組んでいる石炭ガス化炉の技術、及びCO2分離回収技術を用いることで、将来的にはCO2フリーな水素を製造することができる。
説明
褐炭は水分を多く含む若い石炭であり、輸送効率が悪いことから炭鉱付近での発電などに利用方法が限られている。現在はCO2排出による温暖化問題が顕在化しており、豪州においてもCO2問題に対応した褐炭の利用用途の拡大が喫緊の課題となっている。
このような状況の中、当社は褐炭の利用に着目し、石炭ガス化技術を適用した褐炭からの水素製造の研究開発に取り組んでいる。将来的には、CO2分離回収技術を組み合わせたCO2フリー水素の製造を目指す。
褐炭のガス化については褐炭がガス化に適しているのかという課題と、多く含む水分をいかに効率的に乾燥させるかという課題がある。これらの課題に対して、当社はNEDO及び豪州政府からの補助を受けて、水素サプライチェーンプロジェクトに参画している。その中で当社は褐炭ガス化から水素製造までを担当し、褐炭の分析や事前ガス化試験を通じて、豪州に設置するガス化炉の設計を実施し、豪州にガス化炉を設置する予定である。そのガス化炉を用いて褐炭ガス化反応の特性を評価する予定である。また褐炭の乾燥技術についても調査を実施しており、水素製造ブラントに適した効率的な乾燥技術について検討している。
これらの研究開発を通じて将来は水素製造設備の大型化も検討している。水素製造プロセスにおけるCO2は将来的には分離・回収をする予定であり、炭鉱の近くにある貯留サイトと連携して取り組んでいる。水素製造設備大型化の実現により、低コストでCO2フリーな水素を製造することが可能となり、豪州及び日本の水素社会形成に貢献することができる。
連携先
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)