究極の次世代火力発電(酸素吹IGFC)の開発
電源開発株式会社
概要
再生エネルギーの拡大が世界的規模で進んでいるものの再エネや原子力だけでは電力需要をまかなうことはできず、日本および世界で今後も石炭が必要とされる中、J-POWERグループでは石炭利用の脱炭素化が極めて重要と考えている。
石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)は、石炭をガス化したガスを燃焼するガスタービンと、ガスタービンの排熱を利用する蒸気タービンを組み合わせて複合発電を行うことができる石炭ガス化複合発電(IGCC)に、さらに燃料電池を組み入れ3種類の発電形態を組み合わせることにより高い発電効率が達成できる。
J-POWERは、CO2分離・回収型酸素吹IGCC/IGFCの実証事業である大崎クールジェンプロジェクトを推進することで世界初となる究極の低炭素・高効率石炭火力発電であるIGFC技術を確立させ、石炭火力の低炭素化、脱炭素化に貢献する。
説明
J-POWERは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との共同研究事業者として、2002年度より酸素吹IGCCの実現に向けた技術確立を目的として若松研究所においてEAGLEプロジェクト(酸素吹き石炭ガス化プロジェクトCoal energy application for gas, liquid & electricity)を推進してきた。
その後、EAGLEプロジェクトで得られた知見と成果を活かし、NEDOの助成を受け、中国電力株式会社と共同で大崎クールジェンプロジェクトを推進している。同プロジェクトでは、既に第1段階として酸素吹IGCCの実証試験(出力:16.6万kW、石炭使用量:1,180t/ 日)を2019年2月に完了、2019年12月より第2段階として酸素吹IGCCにCO2の分離回収設備を組み込んだCO2分離・回収型IGCCの実証試験を開始した。また、2019年3月より第3段階としてCO2分離・回収型IGFCの実証事業に着手している。
酸素吹IGFCでは、ガス化炉において酸素を酸化剤として石炭をガス化し、一酸化炭素(CO)と水素(H2)を主成分とする石炭ガス化ガスを生成した後、ガス精製設備で不純物を除去されたガスの一部を分岐し燃料電池に導入、分岐したガスと燃料電池で反応した後のガスを合わせて燃焼器で燃焼しガスタービンを駆動する。さらに、ガスタービンの燃焼排ガスは排熱回収設備で排熱回収され蒸気タービンを駆動します。この燃料電池、ガスタービンと蒸気タービンの3種類の発電形態を組み合わせて複合発電を行うことでより高い発電効率72%(発電端・低位発熱量基準)が達成できる究極の低炭素・高効率石炭火力発電技術である。これにより超々臨界圧微粉炭火力(USC)と比べてCO2排出量を30%程度、削減できる効果がある。
IGFCシステムの実証は世界初の取り組みであり、大崎クールジェンプロジェクトでは第2段階までで建設したCO2分離・回収型酸素吹IGCC実証設備に固体酸化物型燃料電池(SOFC)を用いたモジュールを設置し、石炭ガス化ガスからCO2を分離した後の水素リッチガスを供給して発電試験を行い、発電電池モジュールの基本性能や運用性について検証を行い、最適なCO2分離・回収型IGFCシステムの実現に向けた実証を行う。
J-POWERは、酸素吹IGCC/IGFCの実証事業である大崎クールジェンプロジェクトを推進することで世界初となる究極の低炭素・高効率石炭火力発電IGFC技術の確立を目指す。加えてCCUS/カーボンリサイクルと組み合わせることで、石炭火力の脱炭素化を目指す。
連携先
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
中国電力株式会社
大崎クールジェン株式会社
補足情報
大崎クールジェン株式会社HP
https://www.osaki-coolgen.jp/