化石燃料+CCS由来のCO2フリー水素サプライチェーンの構築
住友商事株式会社
概要
当社および川崎重工業、Jパワー、岩谷産業、丸紅、豪州AGL Energy Limitedは、豪州ビクトリア州ラトローブバレーの褐炭から、水素ガスの精製・液化、陸上輸送および積出のパイロット実証と、国際的な水素サプライチェーン構築の実証事業に参画しています。実証設備の建設は、2019年から順次開始しており、最初の水素製造および輸送試験は、2020年から2021年の間に実施を予定しています。
説明
当社は、本実証において、豪州連邦およびビクトリア州政府が取り組んでいるCarbonNet Project(※)とのコミュニケーションを促進する役割を担い、将来のCO2フリー水素サプライチェーンの構築を目指し実証事業の完遂に貢献していきます。
また、本実証において、川崎重工業と岩谷産業は、液化水素積荷基地の建設および運用評価を担当し、Jパワーは、褐炭をガス化し、製造された水素ガスの精製設備を担当しています。また、丸紅はそれぞれの実証を基に将来の商用サプライチェーン構築に向けた具体的な道筋の構築を行い、AGL Energy Limitedは、褐炭の供給とガス精製設備の建設地を提供しています。
当社は、2018年5月に当社内に事業部門横断の「水素関連ビジネスワーキンググループ」を立ち上げ、水素関連のビジネス機会の可能性を追求しており、以下に掲げる目標や課題を踏まえ、具体的なアクションを実行しています。今後も、水素社会の実現に向けた取り組みを加速させていきます。
(※)CarbonNet Project:豪州ビクトリア州が運営する二酸化炭素回収・貯留事業化における調査・実証に関するプロジェクト。
1. 目標
(1) 持続可能な水素社会の実現に向けて、まずは水素の特性が活きるエリア、例えば安価な再生可能エネルギーが豊富で、水素に関する政策があり、化石燃料等の燃料代が相対的に高い、といった地域で、社会実装の検討と実証を推進していくこと。
(2) その上で、水素社会の実現に欠かせない経済システム、即ち、水素を大規模に多方面に広く利活用されるためのエコシステムを検討し、それに向けた実証を進めていくこと。
2. 課題
技術革新と政府を巻き込んだ仕組み作りの2つが大きな課題。
(1) 技術革新においては、何よりも水素の製造コストが既存の化石燃料と比べて高く、これをスケールアップと技術開発で低減していく必要があり、これを産学連携し、Competitionではなく、Collaborationで推進。
(2) 一方、政府を巻き込んだ仕組み作りも非常に大きな課題。水素関連インフラの整備とルールの標準化、炭素税などクリーンなエネルギーへの転換政策や社会受容を促進する政策も水素導入には不可欠。そして各国バラバラの対応ではなく、世界共通のスタンダード等の導入により、世界レベルでの水素事業へのコミットメントが必要。
3. アクション
(1) 再生可能エネルギーの電気による水の電気分解でCO2フリー水素を製造し、水素を燃料にしたモビリティーを動かす、またエネルギーや産業セクターで使用されている化石燃料やCO2を排出している水素を、CO2フリー水素に転換することで、各セクターの脱炭素化を推進するような事業モデルを検討、その実証事業への参画を図っていく。
(2) CO2フリー水素が豊富に安定的に安価に製造できる可能性がある地域で、水素の大型バリューチェーン事業の事業化調査を推進していく。(豪州褐炭事業は正にこの主旨で推進)
(3) Hydrogen Councilなどグローバルな水素協議会を通じて、上記「課題」を具体的に検証し、政策提言などの働きかけを進めて行く。
連携先
豪州連邦、豪州ビクトリア州政府、川崎重工業、Jパワー、岩谷産業、丸紅、AGL Energy Limited(豪)