拡張生態系と協生農法®️
ソニーグループ株式会社
概要
協生農法は多種多様な植物を混生・密生させ、豊かな生態系をつくりだし、元々生態系に備わる物質循環機能を最大限利用するもので、環境負荷の起因となる耕起・施肥・農薬を不要にできます。この農法には動植物の生態に関する知識が膨大に必要になるため、ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)では数年前より数カ所の栽培地で多種多様な植物を混生栽培し、植物同士の相性や土壌の条件などのデータ収集を行っています。さらに、ソニーのIT技術を用い、協生農法をはじめとする、より広範な社会や生態系における多様性を支援するシステムの構築に取り組んでいます。また、協生農法の原理を、食料生産を超えた様々な生態系サービスの最適化に適用することで「拡張生態系(Augmented Ecosystem)」へと一般化し、農地に次いで環境負荷が高い都市部における実証実験にも取り組んでいます。加えて、また、2021年、ソニーCSLでの拡張生態系の研究をより広く社会に実装していくために、ソニーグループ㈱は、株式会社㈱SynecOがを設立されましたいたしました。
説明
従来の多くの農法は単一作物の生産性を追い求め、作物に合わせて表土を耕起し、肥料を撒き、農薬を投入していくため、生態系の破壊などの環境問題を引き起こしています。 ソニーCSLは、持続可能な新農法として「協生農法(Synecological Farmingまたは狭義の栽培法としてのSynecoculture™️)」の実証実験に取り組んでいます。協生農法は、食料生産と生物多様性を両立することを目指した、拡張生態系に基づく新たな農業の具体論です。人為的に生物多様性を高め、目的に応じて生態系の機能を最大限に引き出すことで、生産性と多様性のトレードオフを根本的に抜け出した形での食料生産を可能とします。
また、ICTを活用した拡張生態系のマネジメント支援システムの開発をしています。拡張生態系では、国内でみても数百種を超える有用植物の導入実績があり、未活用の植物も含めると数千種から数万種という数が活用可能になります。それら膨大な植物種と連関する多様な生物種の複雑かつ多層にわたる組み合わせを、超多様性(Metadiversity)と呼称しています。このような超多様性から様々な有用性を取り出すためには、人間の想像力だけではなく、ビッグデータ解析やAIによる強力なサポートが重要となります。そこで、ソニーのIT技術を用い、協生農法圃場のみならず、広範な自然環境、そして都市部や住環境にある生態系のデータを収集・評価できるシステムを開発しています。その端緒として、プランターや小規模な拡張生態系を用いた教育・学習機会の提供も行なっています。
これまでの成果を元に、協生農法を含む拡張生態系とそのマネジメントシステムを包括的に取り扱い、人間活動と生態系が互いを高め合う、広義の文化としての「シネコカルチャー(Synecoculture)」を事業として推進するため、ソニーグループ株式会社のコーポレートベンチャーキャピタル「Sony Innovation fund : Environment」第一号案件として、株式会社SynecOが設立されました。今後、シネコカルチャーを社会実装することにより、多様性の高い生態系の構築、生物多様性についての多面的な価値化が目指されます。
シネコカルチャーはSDGs17目標のうち11目標を直接のターゲットに含み、日本の外務省が推進するジャパンSDGsアクション・プラットフォームの企業によるSDGs取組事例に登録されています。
連携先
株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所
株式会社SynecO
補足情報
サステナビリティレポート2020 P111
https://www.sony.co.jp/SonyInfo/csr/library/reports/SustainabilityReport2020_J.pdf#page=97
注:「協生農法」は株式会社 桜自然塾の登録商標です。
「Synecoculture」はソニーグループ株式会社の商標です。