コージェネレーションシステム・燃料電池の高効率化への取組
一般社団法人日本ガス協会
概要
都市ガス業界は、短中期的には天然ガスシフトや天然ガスの高度利用等の需要側の低炭素化の取組みを進めることにより、日本の温暖化対策や長期エネルギー需給見通しにおける2030年の目標達成等に貢献していく。また中長期的には、メタネーション技術等のイノベーションによる更なる低炭素化・脱炭素化にチャレンジしていく。
短中期的な取り組みにおけるトラジション技術として、日本ガス協会ではメーカーや大学等とコンソーシアムを形成し、コージェネレーションシステムの1つであるガスエンジンの高効率化に関する技術開発を進めている。具体的にはガスエンジンの高効率化に有効な手段の1つである高出力化に向けて、課題の明確化とその解決に取り組んでいる。また同じくコージェネレーションシステムの1つである燃料電池についても都市ガス事業者による高効率化等の取り組みが進んでいる。
説明
都市ガスシステムにおけるコージェネレーションシステムとは、環境性が高い都市ガスを燃料として、必要とされる場所で発電し、同時に発生する熱を冷房・暖房・給湯・蒸気などに利用する高効率なエネルギーシステムであり、代表的な分散型エネルギーリソースの1つとされている。また自然災害時等のレジリエンス性の高さなどの観点からも注目されている。都市ガス業界はこのコージェネレーションシステムの1つであるガスエンジンや燃料電池の更なる普及に向けて高効率化等に取り組んでいる。
・ ガスエンジンの高効率化に有効な手段の1つとして高出力化が挙げられる。しかしこの高出力化を実現する場合、過給機(内燃機関が吸入する空気の圧力を吸気口の圧力以上に高める機器)の高機能化が必要になる。またその場合にはさらに異常燃焼が発生しやすくなり燃焼制御が困難になるので、異常燃焼の抑制や点火要件の明確化等の課題を解決する必要がある。
・ そこで日本ガス協会と(株)サステナブル・エンジン・リサーチセンターが取り組んでいるNEDO事業では、副室点火式のガスエンジンを用いた高出力化の実現に向けた要素技術の開発、要素技術開発に係る研究開発計画の検討に取り組んでいる。
・ このNEDO事業では既に高出力化(現状のPme ※1 =約2MPaから将来的にPme=3MPa)を達成するために、副室点火式の単気筒ガスエンジンを用いて、以下の要素技術の開発に取り組んでいる。
① 超高過給のリーンバーン ※2 トーチ燃焼に関する実現要件の明確化
② 異常燃焼メカニズムの解明とその要因の把握
(※1)Pme(正味平均有効圧力)… ガスエンジンが単位容積当りにする仕事量を圧力単位で示した物理量
(※2)リーンバーン… 理論空燃比よりも薄い(リーンな)混合気で運転すること
・ 日本ガス協会では、上記の要素技術の開発に関する情報を適宜、ガスエンジンメーカー等に提供すると共に、メーカー等からの意見や要望を集約し、技術開発側にフィードバックすることで研究開発計画の検討を進めている。
さらに将来的には、このような高出力化等の基盤技術開発を通じて得られた知見等を元にして、エンジンメーカーが原理試作機による発電効率向上技術の開発に取り組む予定である。
・ 燃料電池については、ガス事業者が各社で固体酸化物形燃料電池(SOFC)の効率を向上させる取り組みなどを進めている。この固体酸化物形燃料電池は酸素イオンが移動する電解質として、セラミックスを用いており、作動温度が高く(700~900℃程度)、その熱を活用することで都市ガス改質に必要なエネルギーの一部を賄うことができるので、高効率を実現することができる特徴を持つ。今後も改良を重ね、さらなる高効率化を目指していく。
連携先
株式会社サステナブル・エンジン・リサーチセンター
補足情報
・ NEDOプレスリリース
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101279.html
・ NEDO事業名:戦略的省エネルギー技術革新プログラム/テーマ設定型事業者連携スキーム/コージェネレーション用革新的高効率ガスエンジンの技術開発
・ 日本ガス協会 温暖化対策の長期ビジョン(都市ガス・天然ガスを活用した長期地球温暖化対策への貢献の絵姿)
https://www.gas.or.jp/kouken/