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メタノール合成(メタノール等の基幹物質の合成によるCO2有効利用)

出光興産株式会社

概要

1.背景・目的
1)メタノールは様々業界で重要な基礎原料として使用されるため、特定の産業の景気に左右されにくく、安定的な需要が見込まれる。
2)製油所から排出されるCO2を回収し、CO2をメタノールに変換することで、CO2排出量を削減するとともにCO2を有価物としてリサイクル活用することを目指す。
3)今回、各構成機器を統合したメタノール製造プラントとしての総合的な運転特性を検証し、カーボンリサイクルメタノールのサプライチェーンを実証することを目的とする。

2.技術目標
1)全体熱利用の最適化による高効率システムの開発
水素製造プロセス、CO2回収プロセス、メタノール合成プロセス間の有効熱利用。
2)CO2を含む排ガス処理技術の開発
CO2回収装置供給のCO2含排ガス精製プロセスの確立(煤塵やSOx等除去)
3)安定したプロセス運用技術の開発
水素、CO2の供給パターンに応じたメタノール製造プラントの運用最適化。
4)リサイクルメタノール製造プロセスの総合評価
運転特性検証、性能経時変化の把握とメンテナンスサイクルの評価。

説明

1.背景
製油所等から排出されるCO2を分離回収し、貯留または有効活用する技術(CCUS)は製油所からのCO2排出量をゼロに近づける切り札となり得る。『CCS研究開発・実証関連事業/苫小牧におけるCCS大規模実証試験』では、分離回収したCO2を苫小牧沖海底下の貯留層へ圧入を2016年4月より開始し、2019年11月にCO2圧入30万tを達成したため、停止し、CCS技術の早期実用化を目指した研究開発、実証試験は完了した。
そこで、今後、さらなる研究開発の拡大を目指したCCUSに関する技術として、製油所等から排出されるガスからCO2分離・回収し、地中に貯留する既存CCS設備と、CO2貯留地点にて行うメタノール等の基幹物質の合成などCO2を有効利用したカーボ
ンリサイクル技術について、プラント全体の相互作用を考慮した基本設計や各構成機器の特性評価、経済性評価、周辺技術調査などを行う。

2.主な調査内容(Phase 1 2020年1月開始)
1)既存のCCS設備を活用したカーボンリサイクル技術の可能性検討
苫小牧での既存CCS設備で貯留される工場等の排ガス由来のCO2の一部を活用し、
メタノール等の基幹物質を合成するためのプラントシステム機器・系統構成に関する基本設計を行うとともに、反応温度・圧力、リサイクル比がプラント性能に与える影響について検討する。

2)原料ガスの精製処理方法の調査
メタノール等基幹物質の原料となるガス中に含まれる水素、CO2などのガス成分が、 基幹物質合成の前段階におけるガス精製処理の方法へ与える影響について調査する。

3)水素とCO2から直接メタノール等基幹物質合成する場合における触媒評価
カーボンリサイクルとしてのメタノール等基幹物質合成システムを想定した圧力および温度条件下における触媒の適用可能性について評価する。

4)メタノール等基幹物質合成の経済性評価
想定される基幹物質合成システムのプラント機器コストやランニングコストを見積もり、既存CCS設備とメタノール等基幹物質合成システムの相互作用を考慮したプ ラント設計において、基幹物質製造に関する経済性について検討する。また、国内外における関連する周辺技術調査を行うことにより、苫小牧におけるメタノール等の化学基幹物質等の合成によるCO2有効利用に関する事業見通しについて、検討する。

2.主な実証内容(Phase 2 2021年5月開始)
1)再エネ水素もしくは副生水素の供給量に応じたCO2の配分運用制御と
ブルーメタノール、グリーンメタノールの合成。
2)メタノール合成、精製(蒸留)プロセス
3)商用機を設定した設計最適化データの取得

3.効果
2030年に85万t/年(国内消費量の約5割)のカーボンリサイクルメタノールが本プロセスで製造された場合、約120万t/年のCO2回収が見込まれる。

4.当社の関わり
原料ガス・電気等の供給。

連携先

経済産業省、NEDO、日本CCS調査、MHPS

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