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無薬注型防食施工システムを活用した設備の省資源化

新菱冷熱工業株式会社

図3. 配管内面の腐食状況(1年間通水後の状態)

図1. 配管の腐食形態(弊社調査結果)

図2. アニオン交換処理のイメージ

概要

一般的に、ビルなどの建物の寿命は30~50年、建物内部の配管など建築設備の寿命は10~15年と、建物より短いといわれています。しかし、配管などの金属材料は、腐食による劣化を低減することで長寿命化・省資源化を図ることが可能です。新菱冷熱(以下、当社)は、建物内配管の長寿命化・省資源化を実現する“無薬注型防食システム(Corro-Guard®)”を開発しました。
Corro-Guardは①~③の技術で構成されています。

① 金属を腐食させにくい水:配管内面の腐食を抑制するアニオン交換水
② 無排水フラッシング:腐食原因となる酸素を除去した水でフラッシング
③ 腐食の見える化:循環水の溶存酸素と管材の腐食速度をモニタリングし、配管内面の腐食状態を見える化

Corro-Guardは、新築建物の設備でその効果を確認しており、現在4物件で運用中です。既設建物の設備については、効果検証のため試験運用を行っています。

説明

建築設備に用いられている配管などの金属材料には、様々な種類の腐食が発生します。例えば、異種金属接触腐食や潰食など、原因が明らかな腐食は、発生件数が減少傾向にあります。しかし、配管の一部が集中的に腐食する局部腐食は、実用的な対策がないため、たびたび発生します(図1)。局部腐食が、空調用の配管や冷凍機の熱交換器銅チューブで起こった場合は、空調設備が運用できなくなることがあります。この局部腐食をどのように防止するかが、大きな課題です。
新菱冷熱(以下、当社)は、この問題を解決する“無薬注型防食システム(Corro-Guard®)”を開発しました。本システムは、建物を施工する際に導入するものです。

以下、①~③の技術で構成されています。

① 予防保全技術:金属を腐食させにくい水
アニオン交換樹脂(マイナスイオンを交換する樹脂)を用いて水道水中の腐食性イオン(Cl-、SO42-)を防食性イオン(HCO3-)に交換することで、「金属を腐食させにくい水」を作り(図2)ます。この水を配管施工時の水張りおよびフラッシングに使用することで、配管内面の局部腐食および全面腐食を抑制します(図3)。配管を施工する段階から防食することが、本システムの大きな特徴です。

② 予防保全技術:無排水フラッシング
配管施工時に配管内のゴミを取り除くフラッシングという作業では、水を数回入れ替える方法が一般的です。しかし、水の入れ替えに伴って腐食の原因となる酸素も配管内に新たに供給されるため、その酸素が配管を腐食させる原因になります。そこで当社は、水を入れ替えずにフラッシングする無排水フラッシング技術の導入を進めています。配管内のゴミをフィルタでろ過しながらフラッシングすることで、酸素による腐食を抑制します。また、水を入れ替えないため、水の使用量を減らすことができます。
無排水フラッシングは、作業完了のタイミングをpH、溶存酸素、濁度の測定結果を用いて定量的に判断します。これにより、確実なフラッシング作業を行います。

③ 予知保全技術:腐食の見える化
これまで配管内面の腐食状態を把握することは困難でしたが、当社は「腐食の見える化」技術を開発しました。配管内の水の溶存酸素(DO)と管材の腐食速度をセンサでモニタリングすることで、配管内面の腐食状態をリアルタイムで確認します。

“無薬注型防食システム(Corro-Guard)”は、腐食によるトラブルが起きてから対応する“事後保全”ではなく、“予防・予知保全”を行うシステムです。Corro-Guardは、新築建物の設備でその効果を確認しており、現在4物件で運用中です。既設建物の設備については、効果検証のため試験運用を行っています。また、適応管種の拡大、効率的な水処理方法の確立など、今後さらなる技術開発を進めています。国内外の建物や工場への本システムの普及を進め、腐食トラブルの低減と建築設備の長寿命化・省資源化に挑戦します。

連携先

横浜国立大学 リスク共生社会創造センター

補足情報

https://www.shinryo.com/news/20170906.html
特許第6114437号、特許第6329672号

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