電解水を利用した半導体製造プロセスの省エネ・低炭素技術の普及

新菱冷熱工業株式会社

写真1. 電解水エアワッシャーシステム内のプリーツ状メディア

図1. 従来型と電解水エアワッシャーシステム実装型の外調機構成の違い

概要

新菱冷熱（以下、当社）は、高性能・環境配慮型の電解水エアワッシャーシステムを開発・実用化しました。現在は普及促進の段階で、国内外のすべての外調機への導入を目指しCO2削減に貢献していきます。
半導体・液晶など精密製品は空気中の塵埃だけでなく外気に含まれる微量なガス成分も除去した高精度なクリーンルームで製造され、最近はクリーンルームの外調機に、空気を洗浄するエアワッシャーとガス除去専用のケミカルフィルタ（Chemical Filter以下、CF）の両方を設置するケースが増えています。
今回当社が開発した「電解水エアワッシャーシステム」は、CFを使わずに、電解水を用いたエアワッシャーだけでガス成分を高効率に除去することができます。CFを設置した場合と比べ、消費エネルギー量24％、CO2排出量15%と大幅に省エネ化・低炭素化できる他、CF交換に伴う産業廃棄物をほぼゼロにできます。

説明

半導体・液晶など精密製品の製造環境では、空気中に含まれる塵埃だけでなく、外気に含まれる微量なガス成分が製品の歩留りに影響を及ぼします。最近では、塵埃とガス成分を除去するため、外調機にエアワッシャーとCFを設置するケースが増えています。しかしCFには以下(1)～(5)の弱点がありました。

(1) CFにエステル系の有機物が吸着すると酢酸が、NOxが吸着すると亜硝酸や硝酸が発生するため、CFがクリーンルームの汚染発生源になってしまう。
(2) CF交換時には外調機を停止する必要があり、クリーンルームの運用・保守が煩雑化する。
(3) CFの除去性能を維持するためには、CF入口空気の相対湿度を低くする必要がある。そのため、入口空気を常時昇温する機構を設けなくてはならないため、消費エネルギー量が大きくなる。
(4) 1～数年でCFの活性炭を交換する必要があり、その活性炭は産業廃棄物となる。処理風量100,000m3/hクラスの外調機から生じる活性炭の重量は1～数年の交換ごとに約1～2トンにもなる。
(5) CFの交換コストがかかる。

今回、当社が開発した「電解水エアワッシャーシステム」は、CFを使わずに、電解水を用いたエアワッシャーだけでガス成分を高効率で除去することができます。当社は、エアワッシャーの吸収液に電解水を用い、プリーツ型メディア（当社開発、特許第5137878号）で空気と電解水の接触効率を向上させる仕組みを開発し、特に酸性ガスを高効率に除去できるシステムを開発しました。その他、外気中の酸性ガス濃度の変動を検知し、最適な電解水量を供給する制御機構も開発、実装しています。

● 特長(1) CFを使わずに高い除去性能を発揮
電解水エアワッシャーシステムは、硫酸イオン（SO42-）99%以上の高い除去性能を発揮します（表1）。アンモニウムイオン（NH4+）も除去することが可能です。さらに、CFが不要になるため、CFから発生する硝酸・酢酸がなくなることが利点です。

● 特長(2) 消費エネルギー量24％、CO2排出量15%、ランニングコスト3割削減
このシステムは、常温で除去性能を発揮するため、従来のようにCFの除去性能を維持するための再熱機構が不要です。また、制御機構（当社開発）によりシステムの最適な運転を可能にします。その結果、外調機全体の消費エネルギー量を約24％、CO2排出量を15%、ランニングコストを3割と大きく削減することができます（当社従来型比）。

● 特長(3) 産業廃棄物ゼロ、環境配慮型のシステム
CFを用いないため、活性炭の交換・廃棄が不要になり、産業廃棄物をゼロにできる環境配慮型のシステムです。

電解水エアワッシャーシステムは現在、普及促進の段階にあり、国内外のすべての外調機への導入を目指します。本システムは、CFを設置した場合と比べ、消費エネルギー量24％、CO2排出量15%と大幅に省エネ化・低炭素化できる他、CF交換に伴う産業廃棄物をほぼゼロにできます。本システムを普及させることにより、産業分野のCO2削減に挑戦します。