ヒートパイプを用いたパイプクーリング工法 ~マスコンクリートの温度ひび割れを抑制する簡易な工法~
鉄建建設株式会社
概要
最近のコンクリート構造物においては、耐久性の観点からコンクリートの初期欠陥を減少させることが求められています。特に、マスコンクリートはセメントの水和発熱によるひび割れが問題となることが増えています。マスコンクリートの温度上昇を抑制する工法としては、一般的に冷却水を循環させるパイプクーリングが用いられていますが、この方法は、循環管理を行う装置の設置場所や大量の水、煩雑な電気配管設備が必要となり、施工性や経済性に課題がありました。そこで、簡易な設備で温度上昇を抑制できる工法の開発が望まれていました。ヒートパイプを利用したパイプクーリング工法はマスコンクリートのひび割れ抑制対策として、コンクリート中に熱移動量の大きなヒートパイプを設置し、煩雑な設備や大型装置、大量の水を使うことなく、コンクリートの水和熱による温度上昇を抑制する工法です。 ヒートパイプは温度差があればゼロエネルギーで熱を移動させてくれるので、脱炭素、温室効果ガス削減に大きく貢献する。
説明
本工法は、あらかじめ埋設した鋼製シース管にヒートパイプを挿入し、コンクリート内部の熱を空気中に放出する非常にシンプルな方法です。また、ヒートパイプの突出部分を扇風機等で冷却し熱移動作用を増強することにより放熱が促進され、より高いクーリング効果を得ることができます。この方法の大きな特長は、従来技術の冷却水の循環や水温制御装置などを使わず、それらの役目をヒートパイプが代わりに行い、コンクリート内部と外部の温度差を動力とした熱移動で、電気など使わずに自然にコンクリートの温度上昇を抑制することです(図-1)。ヒートパイプをコンクリート打設の温度上昇抑制に利用したのは国内初となります。
本工法は以下の特徴があります。
【経済性】ヒートパイプを繰返し使用することにより、大幅なコストダウンが可能です。また、多ロットのコンクリート打設現場でコスト削減も可能です。※ヒートパイプは転用できます。
【プラント設備が不要】冷却水の循環管理・温度調整を行うプラント装置が不要。水の調達が困難な作業現場にも適用可能です。
【容易な施工】ヒートパイプを設置するだけのシンプルな工法です。水温管理等の煩雑な施工管理が不要です。