カーボンフリーな水素社会を目指すCO2フリー水素の国際サプライチェーン構築
ENEOSホールディングス株式会社
概要
ENEOSグループの中核事業会社・ENEOS株式会社は、現在、主に化石燃料を原料に国内で水素を製造していますが、中長期的な低炭素社会の実現のため、CO2フリー水素の国際的なサプライチェーン構築にも積極的に取り組んでいます。
具体的な取組みとしては、国内外4者の共同プロジェクトによる、再生可能エネルギーから「有機ハイドライド※」を直接製造する世界初の実証事業があげられます。 ※水素を貯蔵・運搬できる物質、常温常圧の液体で取り扱いが容易なことが特徴
従来は、有機ハイドライドの「メチルシクロヘキサン(MCH)」を作る際、一旦、水素を作り、その後トルエンと合成していましたが、当社が開発した特殊な電解セルによって、トルエンと水を用いて、電気から直接MCHを製造することで、低コスト化と省エネの道筋をつけることができました。
また、豪州の褐炭から製造されたCO2フリー水素を液化し、日本へ輸出する実証事業である技術研究組合「CO2フリー水素サプライチェーン推進機構」にも参画しています。
今後も、CO2フリー水素の国際的な水素サプライチェーン構築に向けた取組みを通じて、水素社会の実現と地球温暖化の防止に貢献していきます。
説明
政府の「水素基本戦略」でも謳われていますが、現在は、化石燃料由来の水素が主流であり、その製造段階でCO2が発生してしまうため、将来的には水素源の脱炭素化を図ることが極めて重要です。
現在、当社では、CO2フリー水素の国際サプライチェーン構築に関する検討を進めておりますが、そのカギを握るのが、海外からの大規模輸送を可能とするキャリアの技術開発です。
現在、商用化が期待されている主なキャリアとして、液化水素、有機ハイドライド、アンモニア等がありますが、当社は2019年、有機ハイドライドに関する研究でひとつの実績をあげることができました。
2019年3月、当社を含めた企業と大学4者※の共同プロジェクトで、再生可能エネルギー由来の電気から、有機ハイドライドを直接製造する世界初の実証に成功しました。
※ 当社、千代田化工建設株式会社、国立大学法人東京大学、クイーンズランド工科大学
従来は、有機ハイドライドのメチルシクロヘキサン(MCH)を作る際、一旦、水電解で水素を作り、タンクに貯めたうえでトルエンと合成していましたが、当社が開発した特殊な電解セルによって、トルエンと水を用いて、電気から直接MCHを製造することで、低コスト化と省エネの道筋をつけることができました。現在は、まだ実験室レベルの規模なので、引き続き、スケールアップ等の課題に取り組んでいます。
また、当社は2019年8月、オーストラリアの褐炭から製造されたCO2フリー水素を液化し、日本へ輸出する国際的なサプライチェーン構築に向けた実証実験に取り組む技術研究組合「CO2フリー水素サプライチェーン推進機構(HySTRA)」に、商用化検討を進める企業メンバーとして参画しました。
今後、再生可能エネルギーの普及が進むと、2018年の夏に九州電力管内で発生したような出力抑制が各地で起きる可能性があります。
政府が打ち出した「再生可能エネルギーの主力電源化」のためには、気象状況等による出力変動の調整が不可欠となりますが、蓄電池を増設する以外にも、電気を電解装置によって水素に転換して水素の形態で蓄えておく方法も考えられます。水素であれば、大規模な電力を長期にわたって貯蔵することが可能なため、将来導入が進む可能性があります。こうした水素の蓄電機能を活かす事業も積極的に検討していきたいと考えています。
「2040年ENEOSグループ長期ビジョン」では、低炭素・循環型社会への貢献の1つとして、CO2フリー水素事業の創出を掲げています。水素社会の実現と地球温暖化の防止を目指し、CO2フリー水素製造技術の社会実装に向けた研究開発と、国際的な水素サプライチェーン構築へ積極的に取り組んでいきます。
連携先
千代田化工建設株式会社、国立大学法人東京大学、クイーンズランド工科大学、技術研究組合「CO2フリー水素サプライチェーン推進機構」
補足情報
直接MCH製造
https://www.noe.jxtg-group.co.jp/newsrelease/2018/20190315_01_2011051.html
技術研究組合「CO2フリー水素サプライチェーン推進機構(HySTRA)」
http://www.hystra.or.jp/
統合レポート
https://ssl4.eir-parts.net/doc/5020/ir_material_for_fiscal_ym3/71631/00.pdf