EN

電動車用電池のリユース・リサイクル

株式会社JERA

概要

昨今のハイブリッド自動車や電気自動車等の電動車の普及により、近い将来に大量の電動車の中古駆動用電池(以下、「電池」と記す。)の発生が見込まれる。現状、電池については、一部は小規模でリユースされているものの、限定的であり、大半はリユースされずリサイクルとして焼却処理後、残渣を製錬抽出することに留まっている。
また、蓄電池は、再生可能エネルギーによる電気の脱炭素化やエネルギーシステムの地産地消等を目的とした需給調整への活用、火力発電運用の合理化、BCP用途等、多様なツールとして期待される。
そこで当社は、豊富な蓄電池資源の活用を目的とした電池のリユースにより、電力システムにおける電動車価値の活用等を行うとともに、経済性や環境負荷低減のためのCO2削減に配慮した焼却を伴わない新たなリサイクル技術の開発を通じて、低炭素型社会及び資源循環型社会の同時達成を目指す。

説明

〇リユース
今後、電動車の更なる普及が見込まれており、当社は、電動車から回収した電池を蓄電システムとしてリユースすることを目指している。電動車から回収した電池は、単体として性能が低下した電池であっても、多数の電池を組み合わせ適切に制御することにより、再エネ導入の拡大に伴う需給調整への活用や、周波数変動への対応などが可能となり、火力発電所の合理的な運用が期待できる。
しかし、二次利用の更なる拡大に際しては、電池の寿命が正確に把握できず、中古蓄電池の価値の評価及び信頼性に課題がある。この課題解決に向け、効率的な選別、低性能・性能差大電池の安全な使いこなし、長期運用への対応などの技術開発を主導するトヨタ自動車株式会社と、電力システムにおける電池の活用技術の共同開発を行っている。本技術確立により、自動車メーカー、電池の種類に依らない異種電池の組み込みが容易に可能な蓄電システムの構築を目指す。

具体的な取り組みとして、リユース電池を活用した小規模リユース蓄電システムを構築し、各機器の組合せによる動作検証を行い、システムとしての問題点を洗い出し、設備の最適化とリユース電池の制御方法の確立を目的とし実証を行っている。これまでの検討から、リユース蓄電システムは需給調整や周波数変動に対応できる機能を有することが確認できた。

今後、電池として特徴の異なるニッケル水素電池およびリチウムイオン電池等を組み合わせるなど、将来的なリユース電池の種類や発生量に合わせた設備構成を目指すとともに、リユース範囲拡大に向けた検討を進めていく。

〇リサイクル
蓄電池には、ニッケルやコバルトなどのレアアースが使用されており、それら資源は輸入に頼っている。現状、電池をリサイクルする手法としては、容易に内部に蓄積したエネルギーを無害化するため、専ら焼却処理後、非鉄金属を製錬抽出する手法が一般的である。しかし、今後の蓄電池大量導入時代を見据えたレアアース確保のため、リサイクル技術の更なる高効率化と同時に、CO2削減の観点から焼却を伴わないリサイクルが必要である。故に、当社は、高効率かつCO2削減可能な新たなリサイクルプロセスの確立を進めている。

具体的な取り組みとして、ニッケル水素電池およびリチウムイオン電池双方で焼却を伴わないリサイクル手法・プロセスの開発を行っている。
ニッケル水素電池については、各要素技術についてラボテストで実現可能であることを確認し、パイロットプラントを構築した実証を行い、一連のリサイクルプロセスとして成立することを確認できた。
また、リチウムイオン電池については、各要素技術の検証を行い、ニッケル水素電池と同様なリサイクル手法が適用可能であることを確認できた。一方、リチウムイオン電池は、安全かつ最適な前処理方法の確立が必要であり、電池の裁断・破砕方法や電解液の抽出方法の検証を行う。さらに、電解液に含まれるリチウムの回収技術を確立することで、リサイクル範囲の拡大を図る。

今後、これら焼却を伴わない新たな電池リサイクル手法の確立および素材回収率向上を通じ、レアアースの国内還流による調達安定化や、従来手法と比したCO2排出量の削減を図り、電動車の普及拡大等へも寄与していく。

連携先

トヨタ自動車株式会社

補足情報

〇電動車用電池のリユース・リサイクル事業の実証開始について
https://www.chuden.co.jp/corporate/publicity/pub_release/press/3266975_21432.html

〇平成30年度省CO2型リサイクル等設備技術実証事業 報告書
http://www.env.go.jp/recycle/car/pdfs/h30_report01_mat06.pdf

〇電動車活用社会推進協議会 車載用電池リユース促進WG 発表資料
(電力システムにおける電動車用リユース電池の利活用について)
http://www.cev-pc.or.jp/xev_kyougikai/xev_pdf/xev_kyougikai_wg02-1_jera.pdf

この会社の他の事例

高効率火力電源および再生可能エネルギー電源の開発

株式会社JERA

> 詳細を見る

水素・アンモニアサプライチェーンの構築

株式会社JERA

> 詳細を見る

類似事例

2モータシステム用パワーユニット 「4GL-IPU」

三菱電機株式会社

> 詳細を見る

AI/IoTを活用した分散電源(VPP)のデマンドレスポンス(DR)対応

日本電気株式会社

> 詳細を見る

AI制御で最大50%の基地局電力使用量を削減

KDDI株式会社

> 詳細を見る

BEMS (Building Energy Management System)

鹿島建設株式会社

> 詳細を見る

CO₂を分離するサブナノセラミック膜の開発

日本ガイシ株式会社

> 詳細を見る