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殺菌用深紫外LEDによる省エネ及び脱水銀社会へのチャレンジ

旭化成株式会社

概要

現在、殺菌には水銀ランプが広く用いられている。しかし、水銀ランプは人体に有害な水銀を使用していることに加え、消費電力も大きい。 2017 年の水俣条約発効で水銀に関する規制も強化されてきており、省エネと環境負荷低減に向けて水銀ランプを置き換えたいというニーズは高まっている。

このような中、旭化成ではUVC-LED(深紫外LED)の開発を進めている。 LEDは消費電力が少ない上、電源のオン/オフに伴って直ちに点滅させることができ、また、小型ゆえの照射自由度も高いなどの特徴を有している他、水銀を使用しない点で環境にも優しい。これは全く新しい技術であるため、大きなチャレンジとなるが、 2050年に向けて技術開発を進めて性能を大きく向上させ、省エネかつ水銀フリーを実現するUVC-LED により世界の殺菌を革新していきたい。

説明

殺菌では水銀ランプによる照射が広く行われている。生物のDNAはUVC(深紫外)光を強く吸収する性質を持つため、 UVC光を細菌やウィルスに照射すると DNA が破壊され、増殖を抑えることができる。殺菌のために水銀ランプが使われるのは、水銀ランプが254nm をピークとするUVC光を発することができるからである。一方、水銀ランプはその名に示されるように水銀を含み、環境負荷の点からその置き換えが求められている。これまでは水銀ランプの代替手段がなかったが、 UVC 光を発光するLED (UVC-LED)の開発進展により、一部ではその置き換えが起こり始めている。旭化成はその動きを本格化させ、環境に優しい世 界を実現させるため、 U VC LED の開発・製品化を進めている。

旭化成が現在製品化しているUVC-LEDは殺菌効率が最も高いピーク波長265nmのUVC光を発光するLED である。しかし現時点では、水銀ランプと比較すると、投入した電力に対する発光の効率 ( が劣っており、水銀ランプを置き換える の に十分な殺菌効果は出せていない。旭化成ではその効率を上げるための技術開発を進めている。

UVC-LED の特徴は、小型であるために、自由に照射ユニットの形状を作れることにもある。そのため、照射ユニットを工夫することで、効率よく対象物に光を照射することも可能であり、理屈上、水銀ランプの3〜5倍の殺菌効率を得られる。旭化成では、照射ユニットの形状の工夫も重ねることにより、 2025年頃には低圧水銀ランプの殺菌効率を超える能力を持つLED を実現することを目標としている。
現在殺菌目的に使われている低中圧(4W〜40W)の水銀ランプの数量は、約1,300 万ユニットだが、世界経済の成長に伴い、今後も年率1〜3%程度でその数量は増えると見込まれている(Yole report 2018) 。この水銀ランプは徐々にUVC-LED に置き換わると考えられ、発光効率 WPE 改善が計画通りに達成できれば、2030年頃には低圧の水銀ランプをほぼ100%、UVC-LEDに置き換えることが可能である。更に、2050年には中圧も含む紫外線殺菌装置の全て(約2,500万ユニット超)でのUVC-LEDへの置き換えを展望できる。この場合、従来の水銀ランプを用いた機器と比較し、1/3の電力消費となり、年間約20万kWの電力消費削減と試算する。これは、石炭火力発電1/5~1/3基に相当する年間での削減となる。

水銀ランプがUVC-LEDに置き換わることによる、水銀削減効果も大きい。現在、水銀ランプ1ユニット当たり、水銀が5mg〜15mg使われている。2050年に紫外線殺菌ユニットがLEDに置き換わることによって、年間約250kg、2050年までの累積では4.3tを削減することができ、環境への負荷低減を実現できる。

旭化成は 人と地球に貢献する(Care for People, Care for Earth)との方針で、企業活動を行っている。このUVC-LED技術を確立させ、世界中に普及させることによって、グループビジョン「健康で快適な生活」と「環境との共生」を実現し、社会に新たな価値を提供していきたい。

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