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バイオプラスチックを活用した温室効果ガスの排出と吸収のバランスへの挑戦

株式会社三菱ケミカルホールディングス

概要

物質やエネルギーの一方通行的な消費のスタイルから、炭素の循環に着目した循環型の社会に変革していく取り組みを、三菱ケミカルホールディングスグループは様々な分野で進めています。ここで紹介するバイオプラスチックは、我々が長年培ってきたバイオテクノロジー - ケミカル - ポリマー - 加工プロセスの一連の知見を駆使した総合化学の力で、開発と商品化を実現しました。プラスチックはこの四分の三世紀の間、人々の生活を豊かにすることに役に立ってきましたが、化石原料の消費や廃棄物が問題となっています。この課題に対して我々のバイオプラスチックは;
・ 植物由来の原料を使うことで温室効果ガスの発生を抑え、また化石原料からでは得られない機能を得ること
・ 生分解という機能で、利用後の製品の処理にかかる負荷を下げること
によって、温室効果ガスの排出と吸収のバランスに貢献します。

説明

バイオプラスチックは、主に植物を原料とするバイオマス(バイオベース)プラスチックと、土の中でやがて完全に分解する生分解性プラスチックの、大きく分けて2種類の環境対応の素材です。これらの素材を新たに作り出し、機能を高め、安定に生産するための数々のチャレンジを通して、循環型の社会を形作るソリューションとしてお客様に受け容れていただけるように工夫し、提案しています。

i. バイオマスの活用
植物を原料としたエンジニアリングプラスチックのDURABIO(デュラビオ)、高機能ポリウレタン樹脂原料のポリカーボネートジオール BENEBiOL(ベネビオール)、植物系フィルムとシートのECOLOJU(エコロージュ)は、原料が再生産可能なので、化石原料の消費を抑えることができます。また原料が空中のCO2を植物が固定して作られているので、温室効果ガスが大気中に増えることを最小限にとどめます。
バイオマスのもう一つの利点は、生物の分子ならではの特徴が、プラスチックの性能に活かされることです。DURABIOは、イソソルバイドという化石原料からは作るのが難しい原料を使います。そのおかげで、DURABIOはガラスに近い光学特性、表面の固さ、強さ、耐久性の高さなど、他の透明プラスチックでは容易に併せ持つことが出来ない特性を達成することができました。現在は、電子機器、自動車の内外装、ガラスの代替などの用途で使われ始めています。最近では、細菌が表面に付着しにくい性質の応用を進めています。BENEBiOLで作るポリウレタン樹脂は、汎用のものと異なり、人間の汗や酸/アルカリ等の様々な薬品に強い耐性、さらに柔らかな風合いと耐久性を持っており、自動車内装材、スポーツアパレル素材、塗料用途で使われます。また、原料が食料問題と競合しないものであることも、高い評価を受けています。

ii. 生分解の活用
分解するという性質は、プラスチックの利点である耐久性とは相反しますが、分解をいつどのように始めるか制御することによって、使用中はプラスチックが持つ優れた機能を発揮し、役目を終えた後は消滅するという、これからの社会が求めるソリューションの一要素といえます。たとえば、食品包装材や衛生品、農業での作物の栽培用のように使用後にプラスチックだけを分離することが容易でない用途、機能を高める要望に応えて複合化や複層化を進めたことよってマテリアルリサイクルに向かない材料など、処分とリサイクルに労力やエネルギーを多く使う用途には、他のアプローチと並行して、生分解の性質が活かされます。
BioPBSは生分解性プラスチックでありながら、一般的なプラスチックと同等に使え、土の中では環境と微生物の力で水とCO2に分解します。なおBioPBSは原料が植物由来のバイオマスプラチックでもあるので、分解にともなう大気中のCO2の増加は最小限にできます。このBioPBSは、成形しやすい、他の素材と混ぜたり層を作ったりしやすいなどの特徴があり、紙コップやストローといった消費材、農業用のフィルムやテープ、コーヒーカートリッジなどの、リサイクルや処分に手間がかかる製品に応用が拡がっています。
一方、GOHSENOL(ゴーセノール)は界面活性剤としての性質や空気をほとんど通さない性質から、化学品の製造や包装容器、接着剤の原料として利用が進んでいます。特に、水に溶けて生分解されるので、この特徴を活かした用途も開発中です。

iii.バイオプラスチックのチャレンジ
・バイオマス
プラスチックの原料をできるだけ多く植物由来のものに替え、温室効果ガスの排出を抑えることに貢献するため、当社は国内外の研究機関や企業とも連携し、安定かつ経済的に許容されるコストの原料、素材が得られるよう、化学メーカーとしての役割を果たします。
生物が作る分子には、新しい機能をプラスチックに与えてくれる可能性がまだまだあります。そこで社内外で開発を進めているマテリアルズ・インフォマティクスなどITの力も活用し、今はまだ我々が知らない分子構造から機能を導き出すことに挑戦していきます。
バイオマス分子によって与えられた機能を、たとえば自動車の部品を軽量化することなどでエネルギー消費の抑制に活かしていくため、3Dプリンターなどの新たな加工技術も採り入れつつ、素材と技術の組み合わせで初めて実現できる造形設計や商品製造プロセスの革新に寄与します。ここでもIT技術が活躍します。

・生分解
使う人が望むときに分解が始まり、完全に消え去るようにすることが、生分解性プラスチックを活用する上での最大の課題です。プラスチックの利用方法は千差万別なので、すべてのケースで思い通りに分解を制御することはとても難しいですが、まずは、プラスチック製品の製造方法と、その製品の分解を進める要素の開発を進めています。アプローチとして、どのように分解が進んでいくかのメカニズム解明が一つの鍵と考えています。将来的には、プラスチックの分子に、外からの刺激に呼応して分解を開始するような仕組みを組み込むことをめざしています。これらの取り組みを、産官学の共同開発プロジェクトで進めていきます。
一方、私たちは、生分解という性質をまだ十分に使いこなしていません。生分解性が温室効果ガスやエネルギー消費の削減に活かされるような応用方法、すなわち製品のかたち、提供方法、サービスのあり方などについて、幅広くバリューチェーンのメンバーとともに考えていきます。FORZEAS(フォゼアス)は、お客様のニーズに答えて、生分解性のプラスチックを組み合わせ、求められる性質に整えた、プラスチックのソリューション製品です。また、製品の生産から使い終わりまでの温室効果ガスのバランスを知る取り組みとして、政府の委託事業として現在行っている生分解性のフィルムを農業に使った場合のライフサイクル解析は、これからの活動の雛形となるものです。

連携先

化学品、プラスチック、バイオプラスチック関係の業界団体、国内・国際イニシアチブでの活動
SIP、新エネルギー・産業技術総合開発機構、環境省等の研究・委託事業

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