より高度なZEBの社会実装に向けたチャレンジ
前田建設工業株式会社
概要
前田建設の研究開発の拠点「ICI総合センター ICI LAB」の管理中枢を担う、「エクスチェンジ棟」は「ZEBと知的生産性向上を実現する次世代型のオフィス」をコンセプトに設計された。本建物は、省エネ性・環境性から資材調達に至る環境性能が評価されるとともに、特にZEBの実現と、執務者への開放的で、快適なオフィス空間・環境による知的生産性の向上を両立させる計画が認められ、国際的な建築の環境性能評価システム「LEED V4 BD+C New Construction」の最高評価となるプラチナ認証を、国内第一号で取得している。
ZEB化に向けた技術として、地中熱利用水冷ヒートポンプと天井放射空調システムを主体としたタスク&アンビエント空調、様々な方位からの風を捕まえる自然換気システム、電動式制御の内外ブラインド、太陽光発電パネルなど、建設地の自然環境と高効率設備機器を最大限に活用する多様な環境技術を実装。各技術の性能検証を行いながら、運用の快適化やコスト低減を検討し、今後の普及を目指している。
説明
ZEB化に向けて実装された主な技術は、
① 井水を利用した水冷ヒートポンプチラーとデッキスラブ利用天井放射空調システム(新開発)を主体としたタスク&アンビエント空調:地中熱利用オープンループ方式として、井水の熱を外気処理空調機、天井放射パネルおよび水冷ヒートポンプチラーの熱源にカスケード利用
② 様々な方位からの風を積極的に捕まえる自然換気システム:どのような風向でも捕えやすいように工夫された建物形状
③ 電動式制御による内外ブラインド:夏は外ブラインドで日射をカットしながら眺望を確保。冬は内ブラインドで昼光を利用しながら熱を取得
④ 免震階をクールピットとして利用した空調室外機の高効率化:室外機の吸込温度を夏は低く、冬は高くし熱源機を高効率に運転
⑤ 屋上(111kW)および南壁面(22kW)の高効率な太陽光発電パネル
であり、その他チャレンジ的な取り組みとして、「CO2フリー水素利用+ハイブリッド蓄電の直流給電システム」、「燃料電池排熱+太陽光パネル下排熱利用のデシカント空調」なども試験的に導入し、より高度なZEBを目指している。
本取り組みにおける試算(竣工時)では、一次エネルギー消費を約516MJ/㎡年に抑え、太陽光発電による創エネルギーを約549MJ/㎡が見込まれており、運用の最適化に向け、社内のコミッショニングWG活動を実施している。