Society 5.0を支えるエネルギーシステム
株式会社日立製作所
概要
再生可能エネルギー(以下,再エネ)の導入拡大とともに,分散化,デジタル化,電化/電動化などが不可逆的に進む中で,エネルギーシステムの在り方が問われている。東京大学と日立製作所は,2016年6月に,産業界と大学がよりよい社会を実現するということについてビジョンを共有し,その実現のために何をすべきかから始めてスケールの大きな課題に組織対組織で取り組む「産学協創」の新たなスキームのもと「日立東大ラボ」を設置し,特に電力システムについて検討を進めてきた。日立東大ラボでは,オープンな議論による社会的合意形成を目指して,技術ニュートラルな観点にたって検討を進め,Society5.0を支える新しい電力システムに向けた提言(第2版)を2019年4月17日に公開した。
Society5.0の世界では個人の生活が主役となり,地域社会ごとに特色あるエネルギーシステムが構築されなくてはならない。現在の規模拡大を前提とした均一性をもった集中型の概念から,それぞれの地域において人々の想像力・創生力を活用してエネルギーの様々な課題を解決すると同時に,むしろ積極的に新しい価値を創造していく世界をめざす。
説明
エネルギーシステムの在るべき姿を具現化していく手段として,以下(1)(2)の検討を進めている。
(1)評価プラットフォーム
エネルギーの需要・供給を担う多種多様な利害関係者が,オープンで,定量的・客観的な情報発信・共有を行うために,社会便益までを評価できるプラットフォームの構築と公正な運用が必要となる。一事例として,広域安定度シミュレータを開発した。これを用いて再エネ大量導入時に,需給バランス確保に加えて,系統故障を想定した過渡安定性を考慮して再エネ導入限界や出力抑制の必要量を検討できる。現状では電力系統や発電設備の情報は非公開のため,地図情報等から推定した近似データや電気学会標準モデル等で代用している。今後,評価解析や分析に用いるデータの公開・開示の技術的仕組みとルール作りが必要である。
(2)長期エネルギーシナリオと制度・政策
2030年,2050年という長期の視点から在るべきエネルギーシステムの構築を考えていくためには,様々な外的内的な要因に起因する不確実性に対応するために,複数のシナリオによる議論の推進と多様な技術選択肢の準備も必須である。複数シナリオ上の将来像から,バックキャストによって技術開発や設備投資などの移行戦略を明確化していく。このために,基幹システムにおいて3E+Sのアウトカムを評価する「パフォーマンス駆動型政策」を導入し,投資促進と効率化を両立していくべきである。一方,地域社会においては,経済循環の創出により地域創生を支えていくために,データ流通や資金循環の技術的仕組みとルールの構築も求められる。
連携先
東京大学 他