水素利用の促進
電気事業連合会
概要
水素は、利用段階ではCO2を排出しないことから、その製造段階において、CCSとの組み合わせや再生可能エネルギーの利用を前提におけば、ゼロエミッション社会の実現に向けた、有望なエネルギーの一つとなりうる可能性を秘めている。一方で、水素は、その製造から輸送まで含めた現状の供給コストが石炭、天然ガス等の化石燃料に比べて高価であり、水素製造・貯蔵・利用のサプライチェーンの各要素技術に未確立なものが多いことなど、水素利活用の拡大には多くの課題が存在する。
電気事業連合会及び連携先各社では、これらの状況を踏まえ、水素製造から輸送、貯蔵、利用(発電利用・熱利用)までの水素サプライチェーン全体を俯瞰したケーススタディを行い、CO2削減に効果的な水素利用方法について検討を行ってきた[1]。また、いくつかの水素キャリア候補について輸送効率、経済性、環境性等の多面的評価を行っている[2]。
今後も引き続き、社会全体のゼロエミッション化に資する水素利用に向けて、技術、事業性などの面から課題を明確化し、その克服に向けた検討に着手していく。
説明
【再生可能エネルギー大量導入に資する系統安定策としてのPtG利用】
PV、風力等の再エネ主力電源化に向け、需要と供給のバランスをとり、系統の安定化に資するエネルギー貯蔵技術が求められている。中でも電気を水素等のガスに変換する電解技術(Power to Gas:以下PtG)は、数日から月単位でのエネルギー貯蔵に適し、再エネの導入がすすむにつれ、その必要性は拡大する。
既に各方面で変動型再エネと組み合わせたPtGシステムの技術実証が行われているが、アルカリ形、固体高分子形、固体酸化物形など電解技術は競合状態にあり、長期における性能劣化、耐久性などには未知な点が多い。今後は、これらを明らかにするとともに、運用性、低コスト化の展望等の技術評価をすすめる。
【社会全体のゼロエミッション化に資する水素利用】
再生可能エネルギーのPtGによる水素製造は、電力系統の安定化のみならず、運輸、熱および産業など他部門と連携・融合(セクターカップリング)させることで、社会全体のゼロエミッション化に寄与するものと期待されている。
これまで、低炭素化が困難であった熱利用分野でのCO2フリー水素の利活用を対象に技術的・法的制約、安全性などについて検討を行うとともに、熱利用やCCUの拡大に向け導入が期待されているメタネーションについて技術評価を行ってきた。今後は、他部門と連携した水素利用を念頭においた、技術評価、ポテンシャル評価および経済性評価等をすすめる。
連携先
北海道電力株式会社、東北電力株式会社、東京電力ホールディングス株式会社、中部電力株式会社、北陸電力株式会社、関西電力株式会社、中国電力株式会社、四国電力株式会社、九州電力株式会社、沖縄電力株式会社、電源開発株式会社、一般財団法人 電力中央研究所
補足情報
[1] 水素サプライチェーンの経済性とCO2排出量の比較
https://criepi.denken.or.jp/jp/kenkikaku/report/detail/C17009.html
[2] 海外水素調達時の水素キャリア候補の比較
https://criepi.denken.or.jp/jp/kenkikaku/report/detail/Q18005.html