“Single-use plastics”のマテリアルリサイクルによるCO₂排出量削減へ向けた取り組み
古河電気工業株式会社
概要
当社は、"Single-use plastics"の中でもマテリアルリサイクルが難しくその多くが焼却されている積層フィルム包装を、バイオマス由来の繊維(木粉や紙など)で強化することにより、マテリアルリサイクルする技術を開発した。これにより焼却されるプラスチックを減らし、CO₂の排出を抑制することができる。当社ではすでに本技術を使った製品を発売しているが、今後は当社製品のみならず世界へ本技術を普及させ、CO₂排出量削減に貢献していきたいと考えている。
説明
1.背景
"Single-use plastics"とは、1度使用しただけでゴミとなってしまう使い捨てプラスチックのことを指す。例えば、食品や洗剤等のプラスチック容器包装がその例である。これらのプラスチック容器包装は使用後回収されているものの、大半が焼却されておりCO₂排出源となっている。中でもスナック菓子やレトルト食品の包装に用いられるフィルムは、異なる素材(ポリエチレン、ポリプロピレン、PET、ナイロン、アルミニウム、紙など)が複数積層され容易に分離できない構造となっている。そのためマテリアルリサイクルしたとしても機械強度などの物性が低下し、限られた製品へのダウンサイクルしかできず、ほとんどが焼却されている(サーマルリサイクルも含む)のが現状である。一方で、そのようなフィルム容器包装はその利便性のみならず、食品の長期保存や容器包装の軽量化等により環境負荷を軽減している。そのためこれを廃止するのではなくCO₂排出を抑制しながらリサイクルすることが望ましい。
2.開発した技術
当社が開発したのは、上述のマテリアルリサイクルが困難な積層フィルム包装を、繊維強化することによって強度を補い、材料としてアップサイクルする技術である。この技術によって、焼却されるプラスチックを減らしCO₂排出量削減に寄与することができると考えている。強化に用いる繊維としてはカーボンニュートラルなバイオマス由来の繊維を使用する。例えばパルプやセルロース繊維を用いることができるが、木粉、おがくず、パーティクルボード、古紙などの廃棄物を用いることも可能である。これらの廃棄物も一部焼却されているのが現状であり、この点においてもCO₂排出量削減に効果が期待できる。
3.応用
例えば飲料用紙パックは、低密度ポリエチレン、紙、アルミ箔といった異種材料が積層されてできている。このような飲料用紙パックは使用後、紙成分の一部は抽出されて再利用されているが、その際に低密度ポリエチレン、アルミ箔、抽出できなかった紙、水分を含む残渣が排出され、焼却処理されている。今回開発した技術を使えば、この残渣を高密度ポリエチレン以上の強度を持った材料にアップサイクルすることができ、マテリアルリサイクルを実現できる。当社では、この残渣を使った製品をすでに発売している。また、ポテトチップスの袋、チョコレート菓子の袋などに本技術を適用し、ボールペンやパレットなどの試作にも成功している。
4.今後の展開
今後、本技術を当社製品に限らず、世界的に普及させるつもりである。これにより、"Single-use plastics"の焼却量を減らし、アップサイクルして再利用することにより、CO₂発生を抑制したいと考えている。