インベストメント・チェーンの高度化を通じて「脱炭素社会」の実現を支援
三井住友トラスト・ホールディングス株式会社
概要
当社は「責任ある機関投資家」として、株式や債券の運用において、企業業績など財務情報に加え、中長期的なビジネス機会やリスクなど企業価値に影響を及ぼす要因であるESG情報を考慮に入れています。企業とのエンゲージメントや議決権行使といったスチュワードシップ活動においてもESG課題の解決を重要視しています。これは、ESG課題への対応が持続可能な社会を実現すると同時に、企業価値のアップサイドポテンシャルの追求とダウンサイドリスクの抑制に繋がり、ひいてはお客さまの投資リターンの拡大を図る責任、すなわちスチュワードシップ責任を果たすことにつながると考えているためです。
ESG課題の中でも気候変動問題については最重要テーマの一つとして位置づけ、同問題に関するリスクと機会を適切に捉え、エンゲージメントにより低炭素、脱炭素社会への円滑な移行に貢献することでインベストメント・チェーンにおける役割を果たしていきます。
説明
【SMTAMのチャレンジ】
様々な気候変動関連リスクと機会をふまえ、当社では「気候変動」をESGマテリアリティの一項目としてとして特定し、気候関連戦略として国内外企業に対する「エンゲージメント」、「投資戦略の高度化」「運用商品の開発・提供」に取り組んでいます。これらによる資本の最適配分などを通じ、お客さまの投資リターンの最大化と、投資先企業と当社の協働による気候変動問題への貢献を両立することを目指しています。
① エンゲージメント
当社では、エンゲージメントを「企業にベストプラクティスを求める機会」と位置づけて、投資先企業に対し中長期的な企業価値向上に資する意見表明を行っています。気候変動問題については、そのリスクを踏まえた経営判断・体制構築を求める直接の機会と捉え、これを積極的に実施することにより、気候変動問題の解決や運用資産の最大化、運用リスクの抑制を図っています。エンゲージメントには当社が単独で行う場合のほか、PRI、 CA100+(Climate Action 100+)など協働エンゲージメントのイニシアチブを通じて行う場合があります。加えて気候変動に関連したステークホルダーと連携においては、官公庁、業界団体に対するエンゲージメントや、政策提言活動も行っています。
② 投資戦略の高度化
気候変動リスクを踏まえた投資戦略採用、投資判断を行い、運用リスクの抑制とリターン向上を図ります。お客様のご意向や運用戦略など個別の事情に応じて気候変動の要素を加味します。また、個別証券の投資判断において気候変動要素を考慮し、構成ウェイトの引き上げや引き下げを行います。
③ 運用商品の開発・提供
投資商品の提供を通じ、お客様に気候変動に伴う投資機会を提供します。カーボン排出量に応じてポートフォリオにおける投資ウェイトを決める指数に連動するETFをご提供しているほか、気候変動など特定のESG課題解決をターゲットとした集中投資戦略(インパクト投資)の開発などを進めています。
【SMTAMのグローバルエンゲージメント】
当社は、国際的な企業行動指針や原則に署名し、その活動を実践するとともに、国連や海外企業、NGOなどと協力し合いながら、エンゲージメントを行っています。ここではその一例をご紹介します。
<Climate Action 100+>
「Climate Action 100+」は、2017年12月から5年間にわたって実施される、温暖化に与える影響が大きいと考えられる企業に対する協働エンゲージメントです。この活動は、温室効果ガス排出量の多い100社超を世界中からリストアップし、PRIやCeres(下記ご参照)などの署名機関と協働でエンゲージメントを行って情報開示を求めるものです。当社は、アジア・太平洋地域を担当してエンゲージメントを実施します。
(トピックス)米国の大手アセットオーナーと連携して、日本を代表する製造業3社との直接対話も進めております。
<AIGCC>
AIGCC(Asia Investor Group on Climate Change)は、気候変動に関するアジアの投資家団体であり、アジアのアセットオーナーと金融機関に気候変動と低炭素投資に関するリスクと機会についての認知を創出するためのイニシアチブです。当社はAIGCCを通じたエンゲージメントに積極的に参加しています。
(トピックス)気候変動のタクソノミーに関するパブリックコメントに参加し、マレーシア中央銀行に対して、気候変動問題への取り組みに関して情報開示を行うよう意見表明しました。
<Ceres>
Ceres(Coalition for Environmentally Responsible Economies)は、地球温暖化などの環境問題に関する企業の取り組みを推進するNGOです。組織名称は「環境に責任を持つ経済のための連合」です。主に北米を中心に150の機関投資家が参加する投資家ネットワークでエンゲージメントに積極的に取り組んでいます。
(トピックス)継続的にエンゲージメントを行っている米国の電力・公益会社は、2050年までに石炭火力発電から撤退することを表明するなど、Ceresとの協業により意欲的な目標を引き出すことに成功しました
<Investor Agenda>
Investor Agendaは、PRI、CDP、Ceresに署名する運用機関(約480団体・機関)が2018年2月に設立した、気候変動に関して行動する低炭素推進機関投資家イニシアチブです。投資、企業エンゲージメント、投資家の情報開示、政策提言について協働・連携することを目的としています。当社は2019年6月、大阪で開催されたG20における「主要国政府に気候変動への迅速な対応を求める政策提言」を契機に署名しました。この枠組みを通じ、パリ協定で合意した内容の実行を各国政府に提言していきます。
(トピックス)2020年2月には日本国政府、5月には韓国政府に対して気候変動に対する政策的コミットメントを強化するよう提言するレターを共同で提出しました。