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建物及び街区における低圧水素配送システムの実証

大成建設株式会社

図① 水素実証フロー図

図② 水素実証サプライチェーン

概要

 大成建設を代表企業とした7社は、環境省の委託事業である「平成30年度地域連携・低炭素水素技術実証事業」に採択され、室蘭市において2018年度から水素サプライチェーンの実証を開始しています(図①・②参照)。水素吸蔵合金を活用することにより、水素の製造から貯蔵、輸送、利用の全てのフェーズにおいて低圧の水素配送システムを構築しました。低圧水素によりシステムを構築することで、法的制約が少なく設備コストの低減が可能となり、水素価格の低減に貢献します。また、水素吸蔵合金の水素吸放出に必要な熱に建物排熱を利用することで、省エネルギー性能の向上も併せて実現します。

 本技術は、将来建物や街区での水素利用を実現するための重要な技術のひとつです。

説明

 本実証事業は、室蘭市所有の風力発電設備の電力を使って水の電気分解により水素を製造し、運搬、貯蔵、利用までの全てのフェーズにおいて低圧で水素を扱う配送システムであり、将来的に建物や街区への水素利用普及展開を目的としています。

 低圧水素配送システムは、水素吸蔵合金により再生可能エネルギー由来の水素を利用先まで運搬・貯蔵し、電気及び熱として活用するもので、水素運搬車両に搭載した車載型水素吸蔵合金から、利用先に設置した定置型水素吸蔵合金へ水素のみを配送するものです。

 水素吸蔵合金は消防法上の危険物に該当せず、低圧で水素を貯蔵できるため取り扱いが容易です。金属結晶中に水素が存在するので容器が壊れても水素が大量に噴出することがない、合金体積の1,000倍以上の水素を吸蔵するためコンパクトに貯蔵が可能、タンク内部が低圧のため円筒形や箱形など用途に合わせたデザインが可能という利点があります。

 また、水素移送プロセスにおいては、利用場所まで運搬してきた水素を、車載型コンテナに収納された水素吸蔵合金タンクから需要側に設置した定置型の水素吸蔵合金タンクへ、他の物質を伴わず水素のみを移送します。この際、水素放出側は吸熱反応のため熱を加えなければならず、水素吸蔵側は発熱反応のため冷やす必要がありますが、吸蔵側で発生した熱を放出側の加熱に使う「熱のカスケード利用」と建物の未利用熱(排熱)を利用することにより、サプライチェーン全体のエネルギー収支の改善を目指しています。

 水素を将来的に建物や街区に普及させるためには、サプライチェーンの全てのフェーズにおいて低圧で安全に扱えるシステムを構築することが重要です。本技術が将来展開として、再生可能エネルギーが豊富な地方部において、再エネ発電施設に併設された無人の分散型水素製造設備で製造された水素が低圧状態で近隣都市部に輸送され、用途地域に制限されることなく住宅地、病院、商業ビル、工場など多くのエリアで水素の利用が拡大されることに貢献できる技術となることを期待しています。 

連携先

室蘭市、九州大学、室蘭工業大学、巴商会、北弘電社、日本製鋼所(平成30,31年度)と共同

補足情報

環境省平成30年度地域連携・低炭素水素技術実証事業

https://www.env.go.jp/press/105543.html

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