先進のCO2削減技術開発によるイノベーションの推進
大成建設株式会社
概要
大成建設はZEBやスマートコミュニティの普及促進等による低炭素社会の実現を目指して、様々な技術開発に取り組んでいます。そのアプローチは多岐にわたり、省エネルギー技術はもとより、創エネルギー技術、エネルギーマネジメント技術、ウェルネス等の知的生産性向上につながる技術など、あらゆる方向からCO2削減を目指した開発を進めています。また、その対象施設は、多数存在する事務所建築をはじめとして、工場や研究所などのエネルギー多消費型の施設も含め、幅広くユーザーニーズを汲み取った上で、CO2削減との両立を図っています。大成建設は今後も先進的な技術開発の普及を通して、持続可能な社会の実現を支えていきます。
以下、代表的な開発技術をご紹介します。
説明
(1) 意匠性の高いガラス一体型発電システム「T-Green® Multi Solar」
建物に太陽光発電設備を計画する場合、屋上だけでは設置スペースが限られているため、発電設備の導入拡大が困難となっていました。大成建設では、2014年に建設した技術センター内のZEB実証棟において、外壁など外装を利用した太陽電池ユニットを開発・適用し、発電性能の検証・改善などに取り組んできましたが、発電効率の向上と意匠性の両立が課題となっていました。これらの課題を解決する製品として、外壁・窓で発電する多機能で意匠性を備えた外装システム「T-Green® Multi Solar」を、㈱カネカと共同で開発しました。以下のような特長があります(図①参照)。
① 2つのタイプを組み合わせ、様々な建物の外装に適用
本システムには、太陽電池モジュールを外装パネル化したソリッドタイプと、窓ガラスと一体化したストライプ(縞)状の太陽電池を配置することで透過性を確保したシースルータイプの2つのタイプがあります。これらを組み合わせることで様々な建物外装に適用することができます。
② 外装材としての耐久性、優れた施工性を有し、長期間の発電を持続
本システムは、一般的な外装材と一体化しているため施工性に優れ、発電を30年以上持続することができます。
③ 災害時に独立した非常用電源として機能
本システムは、災害による停電時に独立した非常用電源として使用可能です。また、蓄電池と組み合わせることにより、使用範囲や期間を自由に設定することができます。
今後、本システムを都市型ZEBを実現する創エネルギー技術として、積極的に展開していく予定です。
(2) 個人の所在位置を高精度に特定する技術「T-Zone Saver Connected」
近年のオフィスビルではテナントニーズが多様化し、フリーアドレスやサードプレイスといったエリアを活用した働き方の変化に伴い、ウェルネスへの対応や知的生産性の向上が求められています。省エネを維持しつつ、働く人の快適性、利便性の向上には個人の状況やニーズをくみ取り、適切なサポートを行うことが重要となります。そのため、室内において個人の所在位置を高精度に特定できる技術が必須となります。
2010 年に当社が開発した人の在・不在を高精度に識別できる検知技術「T-Zone Saver」は空調・照明制御と連動させることで室内の快適性と省エネ性を両立させる技術としてこれまで多くの建物に導入してきました。これに、個人を特定できる技術であるBluetoothとBeaconを用いたIoT プラットフォームから得られる測位情報を組み合わせ、人の所在位置の情報だけでなく、個人の特定も高精度に行うアルゴリズムを開発・導入(早稲田大学林研究室との共同開発)し、「T-Zone Saver Connected」として機能を拡張させました(図②参照)。本技術の適用により、オフィスで働く人の様々な状況に即して、「居場所のリアルタイム検索」や「好みに応じた空間(空調・照明)の提供」などの快適なサービス提供が可能となります。
(3) 生産施設における室内環境の最適制御システム「T-Factory Next」
工場などの生産施設では、これまで生産設備の稼働状況や作業員の在室状況に関係なく、照明は常時点灯、空調・換気は常時最大設定で運転を行い、無用なエネルギーを消費している場合がありました。このため、生産設備の稼働状況に応じて、室内環境を最適化し、省エネルギー化を図る仕組みが求められてきました。そこで、施設内の設定エリア毎に、照明・空調・換気を最適に制御するシステム「T-Factory Next」を開発し、生産施設の省エネルギー化を実現しました。
生産施設内のエリア毎に、作業員の在室状況、生産設備や照明・空調・換気の運転状況など自動制御のための基本情報を事前に設定し、タッチパネルで運転状態や運転時間などの運転モードを設定する(図③参照)ことで、エリア毎に室内環境の最適制御を行うことが可能となります。製造休止期間も含めた稼働日1日あたりで約20%の省エネルギー化となります。
バリエーションは「個別制御型」または「中央監視型」の2つのタイプがあり、施設内の生産設備やその稼動を制御・監視する製造管理システムの状況に合わせ、適用するタイプを選択できます。
今後は、本システムと生産設備の製造管理システムとの連携、IoT活用による各種稼働データとの連携などにより、さらに高度な省エネルギー運転が可能となるようシステム開発を進めるとともに、食品工場、医薬品工場、半導体工場などの生産施設を対象に導入を推進していきます。
連携先
(1) 株式会社カネカ(共同開発者)