高出力蓄電池を活用した高速調整力の実現
株式会社三菱総合研究所
概要
再生可能エネルギーの更なる普及拡大と分散エネルギーリソースの活用は脱炭素社会実現に向けた大きな課題である。特に、風況や日射変動に起因する発電量の急激な過不足に対応する調整機能(高速調整力)の確保が極めて重要である。
当社は、2019年7月に東京大学発の蓄電池システムベンチャー企業であるエクセルギー・パワー・システムズ株式会社と資本業務提携を行い、同社蓄電池システムを活用した高速調整力プロジェクトの国内外での実装・展開を図る。既に着手している欧州(アイルランド・英国等)における商用化を進めつつ、欧州事例を踏まえた国内制度設計への訴求を行い、国内での事業環境整備に貢献する。国内事業展開に向けては、様々なパートナー企業とも連携し、当社保有ソリューションの活用も検討する。
説明
脱炭素社会実現に向けては、電化率の向上と電源の低炭素化が欠かせない。FIT(固定価格買い取り)制度導入により太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーの普及は一定度進展したが、更なる普及とそれに伴う主力電源化が強く望まれる。その際、電力を安定供給するためにも、再生可能エネルギーを受け入れる電力系統のシステムとしての機能強化が求められる。特に、風力発電や太陽光発電等、風況や日射変動によって発電量が急激に変動する電源については、それを補償する高速調整力の確保が必要不可欠であり、アイルランド・英国といった再生可能エネルギー普及率が高い欧州では、既に顕在化した課題となっている。アイルランドでは、高速調整力を市場調達するためのプログラム(DS3::Delivering Secure Sustainable System)が実施されており、その中には、1秒以内に応答し、約10秒間持続することを求める商品区分も存在している。
東京大学発のベンチャー企業であるエクセルギー・パワー・システムズ株式会社では、蓄電容量に比して極めて高出力なエクセルギー電池を開発・生産しており、1/100秒単位の早くて正確な応答に加え、数十秒間の持続、激しい急速充放電の繰り返しにも耐えられる放熱構造といった特徴を有している。同社では、この蓄電池システムをMW規模で需要家サイト内に設置しDS3プログラムへの応札でマネタイズを図る商用プロジェクト展開をアイルランド国内で開始しており、同国内での更なる普及や同様の高速調整力ニーズのある英国等での展開を目論んでいる。
加えて、EVの更なる普及に向けては大容量充電を高速で行う超急速充電インフラの構築が必要であり、欧州では、350kW×6基(約2MW)の超急速充電ステーション設置も検討されている。このような設備が配電系統に設置されると、局所的な系統増強が必要となるが、同社のMW級高出力蓄電池システムと熱電併給システム(CHP:Combined Heat and Power)を組み合わせて充電ステーションに設置しオンサイト供給することで系統増強を回避することも検討している。
このように、同社高出力畜電池システムとこれを活用した脱炭素社会実現に向けた取り組み(高速調整力とEV超急速充電対応)に課題解決の可能性を見出し、2019年7月に資本業務提携を実施した。当社は、調査・コンサルティング業務を通じて得られた電気事業制度知見やプロジェクト実行能力をもって同社の欧州事業展開を支援するとともに、欧州事例を踏まえた国内制度設計への訴求を行い、2020年代後半に本格化を見込む国内高速調整力対応の事業環境整備に貢献していく。加えて、国内展開においては、様々なパートナー企業と連携したプロジェクト開発を行いながら、同社蓄電池システムを活用した脱炭素社会実現にも取り組んでいく。
連携先
エクセルギー・パワー・システムズ株式会社