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焼却灰等のオンサイト脱塩・炭酸化技術「FAST-BOXシステム」

株式会社フジタ

概要

本技術は、廃棄物を清掃工場等で焼却処分した後に排出される焼却残渣に対して、可搬式のコンテナ型処理装置を用いて安定化促進処理を行うことにより、最終処分場の排水処理負荷軽減や、焼却残渣のリサイクルの促進を目指す技術である。具体的にはコンテナ型処理装置内において、散水処理と炭酸ガス通気処理を行うことにより、これまで実施が難しかった焼却残渣の脱塩と炭酸化をオンサイト(現地)で行い、安定化を促進することを可能にするものである。炭酸化処理は、焼却残渣のpHを下げるとともに重金属類(特に鉛)を炭酸塩化することで、その溶出を低減させることを目的として行うが、焼却残渣中に多量に含まれるカルシウムも同時に炭酸塩化するためCO2固定効果も期待できる。オンサイトの利点として、発生源である焼却施設内で処理を行うことにより、煙突から放出される排ガス中のCO2の利用を可能にする。

説明

我が国において一般廃棄物の最終処分場は、住民反対等から新規建設が難しく、施設の地域的な偏りが大きいことや、近年の自然災害による災害ごみの大量発生の可能性や気候変動に伴うゲリラ豪雨等による雨水の処分場内への流入といったリスクが懸念される。そのため最終処分場の容量を確保することや、埋立物の早期安定化を図り環境負荷を下げることが、安全・安心な最終処分場として強く求められている。最終処分場の埋立物としては、焼却残渣が全体の8割近くを占めているため、その早期安定化やリサイクル技術は、最終処分場の維持管理において極めて重要である。

国内では重金属等を含有する一般廃棄物焼却残渣をリサイクルする方法としては、溶融や焼成といった熱処理が主流である。一方、焼却灰を土木資材としてリサイクルしている欧州では、エージングと呼ばれる自然の降雨による洗い出し(脱塩)や、大気中の二酸化炭素との炭酸化反応により、コストや環境負荷を抑えながら安定化を進める手法が行われている。近年の地球温暖化問題を鑑みると、わが国においても、多くのエネルギーを消費する熱処理だけではなく、エージング処理が普及することが望ましいが、従来のエージング処理では3ヶ月以上という長い時間を要するため、国内においては敷地確保が難しく、実施が限られてしまう。
そこで本技術である「FAST-BOXシステム」とは、このエージング処理の機能に着目し、焼却残渣を対象として、可搬式のコンテナを用いて、適切にコントロールされた散水・炭酸ガス通気処理を施すことにより、オンサイトで安定化を促進することを目的として開発した技術である。

本技術は、焼却残渣中の重金属溶出抑制を目的として、オンサイトの利点を活かし、清掃工場などの排ガスを用いて炭酸化処理を行うことが可能である。アルカリ成分を多く含む焼却残渣に対して、炭酸化処理を行うことによって、残渣中のCa(OH)2がCO2と反応し、CaCO3が生成される反応が生じる。この炭酸化反応により、焼却残渣中にCO2を固定することも期待できる。これまでの知見により、焼却残渣1tDWあたり50kg程度のCO2が吸収できることが分かっており、これを現在の国内の埋立処分されている焼却残渣に適用すると240万tDW×50kg-CO2/t=12.4万t-CO2/年の固定ポテンシャルが期待できる。

また現在、国内で行われている灰溶融処理量はおよそ35万t/年と推定され、溶融スラグは土木資材として活用されている。これを欧州で使用されているようにエージング処理(安定化促進処理)焼却灰で置き換えることができれば、CO2削減量(500㎏/t-焼却残渣)としては、17万t-CO2/年程度が期待できる。

本技術は、焼却残渣の安定化促進処理を行うことにより、社会インフラとして重要な最終処分場の埋立物の早期安定化や、リサイクル促進による容量確保に貢献することができる。これは今後、自然災害の激甚化が予想される中において、社会インフラのレジリエンスを高めることに寄与できる技術ともいえる。加えて焼却残渣の炭酸化によるCO2固定化、熱処理代替による土木資材化によるCO2削減として、年間30万t程度のCO2削減ポテンシャルを有する技術である。

(課題)
チャレンジ実現に向けての課題としては、社会実装化に向けて、本技術の実績を積み上げること、排ガスの利用できるCCU施設の増加、またエージング処理済焼却灰の国内におけるリサイクル基準の整備などがあげられる。

(具体的なアクション)
FAST-BOXシステムの技術開発を行うとともに、技術適用に向けた提案活動を行っている。焼却残渣のリサイクル実現に向けては、環境研究総合推進費3-1804「物理選別とエージングを組み合わせた「焼却主灰グリーン改質技術」の確立」(2018-2020年)に参画している。

連携先

国立環境研究所、福岡大学

補足情報

コンテナーを用いた焼却灰等オンサイト安定化促進処理(FAST-BOXシステム)
https://www.fujita.co.jp/solution-and-technology/detail/fast-box_1.html

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