液化水素貯槽の大型化に関する研究開発(水素社会構築技術開発事業)
トーヨーカネツ株式会社
概要
事業の背景
経済産業省・資源エネルギー庁の策定した「エネルギー基本計画」では、水素を日常の生活や産業活動で利活用する社会である“水素社会”の実現に向けた取組を加速することが記されており、また、「水素基本戦略」では、世界に先駆けて水素社会を実現するための将来目指すべきビジョンや行動計画が示された。その中で、水素発電の本格導入に対応するための水素サプライチェーンの構築の一体的な取組の必要性が示されている。また、「水素・燃料電池戦略ロードマップ」においては、国際的な水素サプライチェーン構築に向けて、水素製造、CCS、貯蔵・輸送、利用における必要スペック目標が示された。そのような社会的・経済的要請に鑑み、本事業においては、液化水素貯槽容量の必要スペックの実現に向け、大型液化水素貯槽の構築に必要となる要素技術の開発を行う。
説明
事業の目標
液化による水素貯蔵は、多様な貯蔵方法の中でも体積密度及び重量密度が高く貯蔵効率が良く、発電事業用水素発電導入時の大量水素需要に対応できる貯蔵方法と言える。現存する水素タンクはいずれも球形であり、球形タンクはその支持構造上、貯蔵容量に限界があり、発電事業用水素発電において供給能力が不足する可能性が考えられる。そこで当社は、大容量の貯蔵が可能になる平底円筒竪形の大型液化水素貯槽の建設に必要な要素技術の開発を行い、将来的には、5万㎥の平底円筒竪形貯槽の建設を可能とする。
事業による効果
混焼または専焼による水素発電を可能にする大型液化水素貯槽を開発することにより、「水素基本戦略」に掲げられた CO2排出制約である「2030 年度、2013 年度比 26%減(2005 年度比 25.4%減)」及び、パリ協定を踏まえた長期的目標である「2050 年度までに80%の温室効果ガスの排出削減」の達成に寄与する効果がある。
実績と今後の課題
これまでに当社では、平底円筒竪形の大型液化水素貯槽における、屋根部、側部、アンカーストラップ部、底部の断熱構造を東京工業大学と開発するとともに、内槽材料特性を研究してきた。2019年度からは、新たに北海道大学大学院工学研究院と協働し、実機建設に向けたさらなる課題「課題1.真空排気システムの確立」、「課題2.内槽底部への入熱量算定手法の確立」、「課題3.SUS316L(※)の溶接材料を使用した溶接施工法の確立」(図-1)について研究開発を進め技術水準と経済性を高めながら、市場投入可能性の高い製品開発を目指している。
※SUS316L:オーステナイト系ステンレス鋼。極低温環境での靭性に優れ、水素脆化の影響を影響を受けにくい。
連携先
東京工業大学
北海道大学
補足情報
当社HPプレスリリース
・「「液化水素貯槽の大型化に関する研究開発」に対するNEDO助成金の交付決定について」
https://www.toyokanetsu.co.jp/pdf/toyo_kanetsu_2091.pdf
・「世界最大の液体水素タンク建設を目指し 東工大と共同開発」
http://www.toyokanetsu.co.jp/pdf/toyo_kanetsu_1083.pdf