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微生物を利用したCO₂変換技術の開発

株式会社熊谷組

図1 鉄酸化細菌を利用したCO₂を原料にエチレンを生産する技術

図2 CO₂利用エチレン生産鉄酸化細菌組換え株(AF-rEF1)寒天培地上(左)および液体培地中(右)に増殖した菌体

図3 ガスクロマトグラフ(GC)法によるエチレン生産の確認(密封容器にCO₂ガス(5%)を封入しAF-WTおよびAF-rEF1を培養、14日の培養後、気相ガスを採取しGC-FID分析した。)

概要

 株式会社熊谷組は、CO₂を原料に化成品原料であるエチレンを微生物反応によって生産する技術を開発しました。エチレンは石油や石炭から生産されるのが主流であり、生産に伴い大量のCO₂を排出するとされています。CO₂からエチレンを生産することが可能になれば、CO₂排出量の大きな削減効果が期待できるとともにCO₂化学という産業分野の創出も期待され、持続可能な低炭素および炭素循環型社会の実現に大きく貢献できると考えられます。

  

説明

1.研究開発の背景

 2015年末パリで開催されたCOP21においてパリ協定が採択されました。パリ協定では気温上昇抑制の2˚C目標のみならず1.5˚Cを目指すべく、可及的速やかな温室効果ガス排出ピークアウト等への取組まで言及され、2050年までに世界全体で約300億トンのCO₂の追加的削減が必要とされています。これに前後し2015年に日本政府は、2030年度に2013年度比で温室効果ガスを26%削減するという削減目標を国際的に約束しました。2018年に開催されたCOP24において、2˚C目標を達成すべくパリ協定の実施が決定されました。熊谷組においてもCO₂の排出量の削減は2000年以降省燃費運転等の活動により2030年度の目標達成に向け、順調に推移していますが、現状の削減効果はほぼ100%に達しており、今の取り組みだけでは限界に近づいてきています。

 その対応策として大規模発生源から回収したCO₂を有効利用するCCU(Carbon Capture and Utilization)技術開発による低炭素・炭素循環型社会の実現に大きな期待がかけられていることから、熊谷組はCCU技術開発に取り組んでいます。これまでに人工光合成・藻類などのバイオプロセスによるCCU技術開発が注目されているものの、現時点ではCO₂の処理能力や有用物質生産効率に課題があり、実用化には更なる改良が必要で、それに代わるプロセスの開発を行っています(図1)。

2.開発技術の概要

 地球温暖化対策やSDGsの観点から「脱炭素」が世界的な潮流になっており、CO₂排出量削減、低炭素および炭素循環型社会実現に寄与し、人工光合成・藻類などとは違う新しいバイオプロセスによるCCU技術開発に取り組みました。具体的には、鉄酸化細菌を利用してCO₂を原料に主要化成品原料となるエチレンを生産する技術を開発しました(図1)。

 CO₂を炭素源として生育する鉄酸化細菌(Acidithiobacillus ferrooxidans,: AF-WT)にエチレン生成酵素(EFE)遺伝子を導入し、CO₂利用エチレン生産鉄酸化細菌組換え株(AF-rEF1)の構築に成功しました(図2)。高濃度CO₂を封入し培養した結果、AF-WTではエチレン生産は認められませんでしたが、AF-rEF1においてエチレン生産が認められました(図3)。

 また、エチレン製造装置として通電型培養装置も開発・製作しています。鉄酸化細菌は通電型培養装置を使用した電気培養技術(電力中央研究所特許技術)を適用することで、菌体密度を高密度化することができます。さらに電子供給による還元力の付与によりCO₂の変換効率を高めることが可能であると考えられています。電気培養には大きな電力は不要であり、再生可能エネルギーなどのCO₂フリー電力を利用することが想定されます。CO₂を原料に使用するだけでなく、生産プロセスにおいてもCO₂排出量削減効果が期待でき、カーボンニュートラルさらにはカーボンネガティブの実現に貢献できる技術となると考えられます。これら開発技術を基に、CO₂有効利用の基盤となる技術として特許「エチレン生産方法およびエチレン製造装置」(特開2019-154435)を出願しました。

3.今後の展開

 現段階ではエチレンの生産性はまだ低いため、実用化にはその他の既存技術と同様に多くの課題を残しています。そのため高効率なCO₂利用エチレン高生産性鉄酸化細菌組換え株の構築および通電型培養装置を利用したエチレン生産システムの開発にさらに取り組む予定です。

 課題解決および開発加速のために4機関で連携し、研究開発体制を強化し取り組んでいます。

  

連携先

国立大学法人茨城大学

芝浦工業大学

一般財団法人電力中央研究所

  

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