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Cを固定し化学品を製造するC1ケミカルを発展させCO₂排出量削減につなげる
~SEG®ライセンス事業を中国で大規模に展開~

ハイケム株式会社

概要

 当社では、C1ケミカル事業としてSEG®技術(合成ガスを原料とし、非石油由来でエチレングリコール(ポリエステル製造原料の一種、以下MEG)を製造する技術)のライセンス事業を中国で大規模に展開しています。石油由来に比べて優れたコスト競争力と低い環境負荷であるという特徴を有する同技術は、中国で高い関心を集め、現在までに合計23件、総生産能力は年産940万トンとなるライセンス契約を締結しました(2020年8月現在)。

 また、この技術は石炭や天然ガスなどのエネルギー源のみならず、産業排気ガスを利用することが可能であり、当社がライセンス提供した中国の大手鉄鋼企業のプラントにて、鉄鋼からのオフガス由来では世界初となるSEG®プラントが2020年8月に稼働開始し、CO₂削減効果を発揮しています。また、原理的にはバイオマス燃料やCO₂を原料としたMEGの製造も可能であり、現在研究開発を行っています。

  

説明

1.C1ケミカルとは

 C1ケミカルとは、1つの炭素原子を含む物質(CO、CO₂などの原料)から化学製品を合成するための有機化学プロセスです。石油以外の資源を活用し、化学製品を製造することが可能であることから、石油資源の有効活用という側面でも注目されています。また、豊富な石炭資源に恵まれた中国においては日本に先駆け、石炭化学として急速に発展しています。C1ケミカルでは、石炭のCが化学品の中に固定されるため、火力発電に利用する場合に比べて石炭中のCの利用効率が格段に向上し、CO₂の排出量が少なくなるという利点があります。

 

2.ハイケムのC1ケミカル事業

 ハイケムではC1ケミカル事業としてSEG®ライセンス事業を展開しています。この技術は、宇部興産株式会社が保有する技術をベースにしており、宇部興産がDMO技術を当社にライセンスし、当社が中国企業にDMOを含めたMEG技術をライセンスするという形で、ライセンスビジネスを展開しています。また当社では、DMO触媒及びEG触媒を製造する自社工場を、中国・南通市に保有しており、ライセンス先などへ触媒を供給しています。

 当社がこれまで締結したSEG技術のライセンス契約数は合計23件、総生産能力は年産約940万トンに達し、そのうち100万トン以上が商業運転を開始しています(2020年8月現在)。

  

2-1.SEG®ライセンス事業

SEG®技術の特徴

  • CO2排出量が少なく経済性の高い製造技術

 SEG®は従来の石油を原料とする製法であるエチレン法に比べCO₂排出量が少なく経済性の高いプロセスです。エチレン法のC原子利用率は70%と低く1/4はCO₂として排出されてしまいます。一方SEG®ではC原子利用率95%を実現しており、環境負荷が低く経済性の高いプロセスです。よって、現在中国で製造されているMEGの半分がSEG®に切り替わってきています。

  • 原料の多様性

 SEG®の大きな特徴の一つは原料の多様性です。石炭、天然ガス、産業排気ガス、バイオマス燃料などの幅広い原料を利用することができます。

 1.産業排気ガスからMEG

 石炭や天然ガスなどのエネルギー源のみならず、カーバイドや鉄鋼の生産過程で排出されるオフガスなどの排気ガスも利用可能です。

 中国の大手民営鉄鋼企業「山西晋南鉄鋼集団有限公司」の完全子会社である「山西沃能化工科技有限公司」では、製鉄所からのオフガスを利用し、SEG®を用いて、30万トン/年のMEGプラントを2020年8月に稼働開始させました。このプラントが通年稼働した場合、年間56万トンのCO₂排出量を削減できる見込みです。

 ハイケムがこれまで実施した940万トンのライセンス契約のうち、75万トンのMEGの製造にコークス炉ガスなどの産業排気ガスを原料として使用しており、これらのプロジェクトが全て稼働した場合、年間125万トンのCO2を削減できる見込みです。

 2.CO2やバイオマス原料からMEGを開発中

 SEG®では、CO₂やバイオマス原料からのMEGの製造も技術的には可能であり、自社で研究開発を行っています。これが実現すれば、より直接的なCO₂の削減が可能となり、持続可能な社会の実現に大きく貢献することになります。

  

連携先

宇部興産株式会社

  

補足情報

プレスリリース:2020年08月31日 製鉄所の副生ガスから化学品を製造する世界初のプラントが稼働

~年間56万トンのCO₂を削減見込み~

https://highchem.co.jp/topics/2020-08-31/

  

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