寒冷地でのZEB普及に向けた実証研究
北海道電力株式会社
概要
ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)は、快適な室内環境を保ちながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指す建物です。
北海道電力は、全国の電力会社に先駆けてZEBプランナーに登録・活動を開始し、寒冷地のZEBの普及を進めています。寒冷地のZEBは、地域特性をふまえた技術検討や施工コストが課題となりますが、計画、設計、竣工後の運用に至るまで一貫したコンサルティングを実施することで、ZEBの実現に取り組んできました。
また、新たに地域の大学・企業と連携して、低コスト・高効率な地中熱ヒートポンプ(GSHP)システムを活用した小中規模建物を対象とするZEBの実証にも取り組み、寒冷地のZEB普及拡大を目指します。
説明
ZEBは、エネルギー基本計画で「2030年までに新築建築物の平均でZEBの実現を目指す」と掲げられており、業務用建物の省エネルギーの重要な施策として位置づけられています。積雪寒冷地である北海道では、暖房エネルギーの割合が高く、温暖地とは異なる環境に対応する建築手法が求められることから、ZEB化に向けた省エネルギー・低コスト化技術や知見の不足が課題となっています。
当社は、2018年2月に全国の電力会社で初めてZEBプランナーに登録され、総合エネルギー企業として寒冷地における最適なエネルギーシステムを提案してきた実績を活かして、寒冷地ZEBの達成に向けて精力的に活動してきました。熱負荷の徹底的な見直しによる空調機器のスペックダウンと、それに伴う受電設備容量の低減にいたるコストダウン提案等のほか、計画・設計段階の提案だけでなく、竣工後のデータ分析・運用改善の提案までをトータルで担うことで、運用面も通したZEBの実現をサポートしています。
こうした取り組みに加えて、2019年度から新たに低コスト・高効率なGSHPシステムを活用した寒冷地における普及型ZEBの実証試験※を開始しました。
※国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)助成事業「再生可能エネルギー熱利用にかかるコスト低減技術開発」
実証試験では、寒冷地のZEB化を目指す小規模建物に対して導入可能な、低コスト・高効率なGSHPシステムを開発することにより、トータルコスト20%以上削減の実現を目指します。
当社は、ZEBプランナーとして建物のZEB化設計支援と運用改善提案を実施し、寒冷地での普及型ZEBの標準モデルを構築します。さらに、高効率な空調技術として、天井放射空調システムをGSHPシステムと組み合せて、省エネルギー性、ランニングコスト低減、快適性の効果について実証し、寒冷地のZEBに最適な運転技術を確立します。
本実証は、北海道内の大学、設計・施工会社を含む6者が連携して実施することから、省エネルギー性と快適性を両立したZEBについて、地域の認知度向上や技術力強化にも貢献するものです。
本実証を通じて得られる新たな技術・ノウハウを活用し、寒冷地のZEB普及拡大にチャレンジするとともに、再生可能エネルギーの有効活用による環境負荷低減の取り組みを通じてSDGs(持続可能な開発目標)の達成を目指してまいります。
連携先
助成事業は、北海道大学、エムズ・インダストリー(株)、棟晶(株)、(株)イノアック住環境、サンポット(株)、当社の6者コンソーシアムで構成
補足情報
北海道電力「ZEBコンサル」
https://www.hepco.co.jp/business/electrification/zeb/index.html
NEDO助成事業「再生可能エネルギー熱利用にかかるコスト低減技術開発」
https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100154.html
北海道電力プレスリリース(2020年2月5日)「寒冷地でのZEB普及に向けた実証の開始について」
https://www.hepco.co.jp/info/2019/1248471_1803.html