HFC-32高性能空調機の世界展開による省エネルギー推進
ダイキン工業株式会社
概要
空調機の需要は今後も世界的に拡大し、IEAによれば2050年には2015年の3倍になると予測されています。電力需要の増加や空調機に使用する冷媒による気候変動への影響が懸念されます。
「HFC-32高性能空調機の世界展開による省エネルギー推進」は、地球温暖化係数(GWP)が従来冷媒の1/3であるHFC-32を採用し2012年に世界に先駆けて商品化した空調機を、日本国内はもとより世界各国に展開することで、気候変動の抑制に貢献するものです。
製品開発、流通開拓や販売活動だけでなく、特許の開放、国際規格の開発や国際規格の各国での適用、国際機関・NGO等の連携等、ルール形成を進め、さらに技能者の育成など普及拡大のための制度・事業環境を整備してきた結果、2019年末現在世界90カ国以上で2300万台以上のHFC-32空調機を販売しており、従来冷媒が継続して使用された場合と比較するとCO2排出抑制効果は1.6億トンと試算しています。
説明
新興国市場にアプローチする「新たなビジネスモデル」
HFC-32空調機を世界各国に展開するためには、空調機市場が急速に拡大している新興国へのアプローチが特に重要です。ダイキンはHFC-32の普及拡大のため、日本政府、国連機関、国際機関と連携し、次の3つの観点で新興国政府に働きかけ、冷媒転換を支援しています。
3つの施策と具体的な活動内容(インドでの実績のご紹介)
施策①:国への政策提言 ⇒環境性能の高い冷媒への転換促進
現地での実証実験により地球温暖化抑制効果を証明し、現地セミナーや政府関係機関への個別訪問を通じて、HFC-32高性能空調機がインドの電力政策、気候変動政策に有効であることを訴求しました。
施策②:現地産業への技術支援 ⇒転換の容易性の理解
空調機の据付・サービス技術者は、空調機が正常に稼動するために不可欠な存在です。彼らにHFC-32高性能空調機の良さとともに、扱い易さへの理解を深めてもらうため、ダイキンは経産省の支援を得てインド12都市で76回の教育研修を実施し、技術者約3600名への教育を実施しました。
施策③:安全と性能のための規格整備 ⇒安全性の向上
HFC-32高性能空調機の普及を持続可能なものにするため、安全と性能を担保する国際規格をインドで国内規格化するための支援を実施しました。
政府主導の技術委員会への積極的に参加するなど、技術的観点からの貢献を継続した結果、インバータ空調機の性能評価基準の国際規格がインド国内で規格化され、インバータ空調機のためのエネルギー効率ラベリング制度が新たに設立されました。
関係する特許の開放
普及へのさらなる支援として、上記に加え、世界中のエアコンメーカーがHFC-32を採用できるよう、2011年にHFC-32機器応用特許の93件を無償開放、さらに2019年には約180件を無償で利用可能とする誓約を行っています。
HFC-32空調機の普及実績
HFC-32は、地球温暖化係数が従来冷媒の1/3で、温暖化影響の抑制に有効な冷媒です。さらにこの冷媒の特性を活かすことで、空調機のエネルギー効率を大きく向上させることができます。
2012年11月、ダイキンは世界に先駆けてHFC-32を使用した住宅用空調機を日本で上市。これを皮切りに世界で販売を拡大し、2019年12月時点で、累積でHFC-32空調機を2,300万台以上世界で販売しています。当社以外でもHFC-32を選択するメーカーは増え続けており、他メーカーを含む市場全体で、これまでに1億台を超えたと推測、そのCO2排出抑制効果は約1.6億トン※になると試算しています。
ダイキンは、「環境ビジョン2050」を掲げ、2050年に当社製品から生じる温室効果ガス排出をライフサイクル全体で実質ゼロをめざしています。排出削減の施策の柱の一つとして、低温暖化冷媒を使用した空調機の世界普及を今後も進めていきます。
※従来のHCFC-22、HFC-410A冷媒を継続して使用した場合との比較
連携先
日本政府、国連機関、国際機関
補足情報
本案件に関するニュースリリース
2016年01月19日
平成27年度 省エネ大賞において『HFC-32高性能空調機の世界展開による省エネルギー推進』が「経済産業大臣賞」、ビル用マルチエアコン『VRVシリーズ』が「省エネルギーセンター会長賞」を受賞
https://www.daikin.co.jp/press/2016/20160119/