排水処理副生バイオメタンガス燃料電池発電システムの開発と実証
アサヒグループホールディングス株式会社
概要
当社の酒類・飲料工場の排水処理工程で得られるバイオガスは、燃やしてもCO2排出量にカウントされないエネルギー源として、ボイラで燃焼し熱に変換されている。しかし熱は放熱などのロスが多く効率が悪い。そこでバイオガスは燃やさずに高効率な燃料電池発電に使うことで、更なるCO2排出削減を目指そうと考えた。これまでCO2排出削減効果を上げるために、多くの機関がバイオガスを用いた燃料電池発電に挑戦したが、事業実装に成功したものは無い。これは、バイオガス中の硫化水素などの被毒物質が、燃料電池の電極を不活化し発電性能を劣化させたためだと考えられた。そこで我々は被毒物質を高効率に除去できる安価なシステムを開発し、被毒物質を除去したバイオガスを用いて長期連続発電試験を実施した。その結果、社会実装可能な10,000時間を超える連続発電に成功した。この成果を受けて、環境省補助事業として今秋稼働を目指した200kW級の実証設備を現在建設中である。
説明
当社の酒類・飲料工場の排水処理工程で副生するバイオメタンガスは、カーボンニュートラルなエネルギー源としてボイラに供給・燃焼後、熱エネルギーに変換され、工程で使用している。しかし、熱エネルギー変換は、本質的にエクセルギー損失や放熱ロスを生じる特性があり、そのことがエネルギー変換効率を下げている。そこで、より一層のCO2排出削減を目指し、エクセルギーとして直接電力を得る事で効率が向上し、その結果CO2排出量の大幅な削減が可能となる燃料電池を用いて、熱では無く電力でエネルギーを得る事を考えた。燃料電池は発電効率が高く効果的であるが、現在稼働している電池は化石燃料由来の燃料によるものが多く、CO2排出削減への寄与は少ない。そこでこれまで多くの企業等がバイオ燃料を用いた燃料電池発電技術の社会実装にチャレンジしてきたが、長時間安定稼働に成功した例は無かった。この理由として、副生バイオメタンガスには硫化水素のような被毒物質が存在し、燃料電池電極を不活化してしまうためであると考えられた。そこで我々は自工場で産生する排水副生バイオメタンガスを安価に精製し、被毒物質を極限まで減少させる事で、事業実装可能となる燃料電池発電が可能となると考え、安価で高効率な被毒物質を除去できるシステムを開発した。そして、このプロセスで製造した精製バイオメタンガスを燃料として、実際に市販の産業用燃料電池に使用されているSOFC燃料電池セルを用いた長期連続発電試験にチャレンジした。この発電試験は順調に推移し、その過程では2018年に日経地球環境技術賞の優秀賞を受賞し、さらに発電を継続した結果、燃料電池の事業実装可能の条件と考えられる10,000時間を超える連続発電試験に成功した。この結果を受け、現在、本技術をスケールアップした200kW級の発電実証設備を、環境省の補助事業としてビール工場内に建設中である。
本実証設備は2020年秋までに稼働を目指しており、その後当該施設の投資採算性、CO2排出削減性能を含む総合的性能評価を実施し、その結果を公表した上で、広く日本国内における当該プロセスを希望される企業・団体に技術提供を実施できればと考えている。
今回チャレンジする具体的なターゲットは下記の通り。
バイオメタンガス精製性能:60Nm3/h
燃料電池使用燃料:排水処理副生バイオメタンガス、都市ガス(マイクロガスタービン他)
到達目標:送電端発電効率51%LHV※1(初期)、投資回収年数10年
※1)バイオメタンガス発熱量が都市ガスと同等と換算した時の効率
市場展開開始時期:2022年4月以降
克服課題:CAPEXの極小化、OPEXの効率化、施設展開SCMの構築
具体的アクション:弊社はアサヒグループ事業会社へ展開し、CO2排出削減を求める。
本技術が我が国のCO2排出削減に資するレベルとなる場合、他の経団連企業様と組む事で、技術導入を求める企業・団体へ設備供給や技術指導を実施することが可能となり、その結果オールジャパンで、パリ協定の公約達成に寄与できる事を期待している。
連携先
アサヒビール株式会社
三井住友ファイナンス&リース株式会社
三菱日立パワーシステムズ株式会社