地産地消型木質バイオマスガス化発電
三機工業株式会社
概要
現在、国内各地で木質バイオマス発電施設の導入が進んでいますが、その多くは発電効率の高い5MW以上のボイラ+タービン発電方式で、年間6万トン以上の原木が必要となり、主に輸入材を使用しています。
一方、2MW未満の中小規模の施設は、比較的周辺地域での集材が可能で、「地域の森林資源を適切に活用し、地産地消や地域経済の活性化を図る」ことができますが、ボイラ+タービン発電方式では小規模になると発電効率が急激に低下するという問題があります。
当社が提供する木質バイオマスガス化発電技術は、発電効率の高いガスエンジンを用いることで、2MW規模でも5MW以上のボイラ+タービン発電方式と同等の効率での発電が可能です。
今後本技術を日本だけでなく世界各地に広めることで、CO2排出削減や地域経済の活性化に貢献していく予定です。
説明
日本は、国土の約3分の2を森林が占めており、森林蓄積は52億m³程度に達しています。このため森林資源は、風力や太陽光と並ぶ再生可能エネルギー源として期待されています。森林資源の健全な育成は、国土保全だけでなく豊かな海洋資源を生み出す源泉でもあります。これまで林業は、外国産材に押され縮小を余儀なくされていましたが、国産エネルギー源の一つとして再び注目を集めています。
2MW以下の木質バイオマス発電は、これまでほとんど未活用であったカーボンフリー燃料である未利用間伐材の有効活用を推進するもので、地域経済循環に資するものです。また、天候や昼夜などの外的要因の影響を受けず、出力一定で24時間連続、安定的に発電ができることからベース電源として期待されています。
図-1に発電システムの概略フローを示します。ガス化設備は、木質チップを燻して主にH2、CO、CH4等の生成ガスを作るガス化炉、生成ガスを冷却・精製するガス処理設備、ガスエンジン発電機による発電設備、発生する木タール(木酢液)を処理するタール処理設備で構成されています。
まず、原料となる木材は、丸太の状態(想定含水率55%)で搬入され、ストックヤードに保管し、約半年間の自然乾燥を経た後(想定含水率45~50%)、チップに加工されます。このチップが炉の上部から投入され、ガス化炉内の各ゾーンを経て、炉底部から灰として排出されます。一方、可燃性ガスは、炉の底部から上部に向けて流れエンジンへ送られます。
・乾燥ゾーン
投入された木質チップを生成ガスの熱を利用して乾燥
・熱分解ゾーン
木質チップの熱分解反応により可燃性ガスを生成
・還元ゾーン
熱分解により発生した固定炭素を水蒸気改質してガス化 C+H2O→CO+H2
・酸化ゾーン
固定炭素を部分酸化(燃焼)させ、ガス化反応に必要な熱エネルギーを供給
ガス化炉を出た生成ガスは、冷却、タール分の除去等を行った後、ガスエンジンの燃料として使用し発電を行っています。
生成ガス中の木タール分は、生成ガス冷却器および湿式電気集塵機において、ガス中の水分とともにタール含有水という形で取り除かれます。その後、タール分離槽にて比重分離を行い、タール成分の濃い「重質タール」と水分が多くタール成分の薄い「軽質タール」に分けられます。重質タールは、燃焼に十分な熱量を保有しているため、そのままタール燃焼装置で燃料として利用します。一方、軽質タールは、水分が多く熱量が低いため、システム内の余熱を利用した蒸発濃縮装置において所定の濃度まで濃縮し熱量を高めた後にタール燃焼装置へ送られます。さらに、この過程で分離した蒸発水分(フラッシュ蒸気)も臭気対策等を兼ねて、850℃以上に加温されたタール燃焼装置内で高温酸化分解処理を行う「自己完結型」のシステムとなっています。
このシステムでの総合発電効率の実績値は、チップ含水率45~50%で22~26%程度となっており、高い効率を有しています。
本技術は、再生可能エネルギー利用によるCO2削減というだけでなく、地域経済の活性化や国土保全などにも資するものです。今後本技術を日本だけでなく世界各地に広めることで、社会に貢献していく予定です。