カーボンリサイクルメタノール事業
三菱ガス化学株式会社
概要
三菱ガス化学(株)はパートナーと共に、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「苫小牧のCO2貯留地点におけるメタノール等の基幹物質の合成によるCO2有効活用に関する調査事業」に参画します。北海道苫小牧市の製油所から発生するCO2の回収・貯留(CCS:CO2 Capture and Storage)実証設備を活用し、回収CO2からメタノールを合成するCO2利用(CCU:CO2 Capture and Utilization)技術に関して、2021年2月までの2ヵ年度にわたり調査事業を実施します。この事業を通して、カーボンリサイクルメタノールの経済性・事業性の課題を洗い出し、カーボンリサイクルメタノール事業への展開に繋げて行きます。
説明
今回のNEDO公募は、製油所から排出されるガスからCO2を分離・回収し地中に貯留する既存CCS設備と、CO2貯留地点にてメタノール等の合成などCO2を有効利用するカーボンリサイクル技術について、プラント全体の基本設計や各構成機器の性能評価、経済性評価、周辺技術調査などを目的として行われました。
三菱ガス化学(株)はパートナーと共に、CO2回収設備からのCO2と製油所から副産物として出てくる水素、水電解装置により発生させた水素を原料として、化学品原料や燃料として有用なカーボンリサイクルメタノールを合成することを提案しています。20トン/日級規模のカーボンリサイクルメタノール合成プラントをCCS設備と組み合わせることを想定し、CO2をCCSとCCUに適切に配分することで設備を効率的に運用できると見込まれます。
経済産業省が公開したカーボンリサイクル技術ロードマップには、メタノールは基幹物質に位置付けられ、重要な基礎原料として化学製品用途や燃料などのエネルギー用途に展開可能とされています。メタノールの需要は年々上昇し、2019年の世界需要は約8000万トンに達し、そのうち日本の需要は180万トンを占めています。しかし、国内のメタノール製造は1990年代に中止され海外からの輸入に100%依存しています。国内でCO2からメタノールを製造することができれば、直接的なCO2削減に加え、長距離輸送で排出するCO2を削減できるという一石二鳥の効果が期待できます。
メタノールは天然ガスや石炭からCO、CO2や水素を含む合成ガスを経由して製造されます。この時、化学反応を触媒で活性化する必要があります。
MGCのメタノール事業は1950年代に日本で初めて天然ガスからメタノール合成に成功したことから始まり、1980年代から海外に合弁会社を設立、自社技術・自社触媒によるメタノール生産を続けています。
メタノールを安定的に安価に供給するには化学的にも物理的にも堅牢な高性能の触媒が必要です。三菱ガス化学(株)が長年培ってきた触媒開発の経験とノウハウを活かし、高性能な独自触媒を自社で安定製造できることは三菱ガス化学(株)の強みです。
今回の調査事業を通じて、CO2からメタノールの事業化課題を整理し、事業化の準備と共に、脱炭素社会実現に向けたイノベーションへ協力していきます。
連携先
・三菱日立パワーシステムズ株式会社
・三菱重工エンジニアリング株式会社