食品廃棄物利用小型バイオマス発電システムの開発と木質バイオマス活用へのチャレンジ
ヒューリック株式会社
概要
ゼロエミッション技術の一つであるバイオマス活用技術は、官民を挙げて様々な技術開発と普及促進が図られている。バイオマス資源としては、山林の間伐材や製材時の端材を利用した木質バイオマスや、工場や事業系建物、農業分野からの食品系廃棄物バイオマスなどがある。
不動産デベロッパーである当社は、低炭素社会と循環型社会の実現に向けて環境経営を推進している。その一環として、大型商業施設やホテル等から廃棄される日量500kg以下の食品系廃棄物を利用した発電・熱供給システムを開発し、実装することで、廃棄物のエネルギー転換、ゼロエミッション、施設運営の省力化を目指す。また、木質バイオマス活用についても、森林サイクル活性化を目的に当社が取り組んでいる建物の木質化に際して発生する端材や、山林の間伐材の有効活用、林業活性化の理想的なモデル構築についてもチャレンジを行う。
説明
食品系廃棄物を利用したバイオマス発電システムのうち、工場以外の非住宅系建物で実装・完結している事例は少なく、システムの安定稼働と事業性の両立が可能となる1日当たりの食品系廃棄物量は、既往事例においては2~3tとされている。
これに対して、日本の工場以外の非住宅系建物ストックの大部分を占める中小規模の建物からの排出される食品廃棄物は数100kgであり、現在のシステムでは適合性が低い状況である。そこで当社は、保有する商業施設やホテルを対象に、ゼロエミッション、省エネ・省CO2、施設運営の省力化を目的に、日量500kg程度の食品系廃棄物でも安定稼働と事業性が両立できる小型のバイオマス発電システムの開発を行い、普及のための製品化を目指す。
また、当社は建設時のCO2発生量削減と森林サイクルの活性化を目的に、開発建物の国産木材による木質化検討を推進している。建物建設時に必要となる木製部材の製材時に発生する端材や、山林の間伐材を利用し、山林を有する地域を活性化するモデルとなるエコシステムの構築にもチャレンジする。
■ 食品廃棄物利用小型バイオマス発電システム実現のためのロードマップ
2020年 パートナー企業と開発に着手(既往技術と関連特許の調査)
↓
2022年 試作機の作成と実証試験
↓
2026年以降 普及を目的としたシステムのパッケージ化(製品化)着手
■ 食品廃棄物利用小型バイオマス発電システムのイメージ
・ 商業施設やホテルの厨房生ごみや食品残渣を回収
・ バイオガス発酵槽で、微生物等により厨房生ごみや食品残渣からバイオガス(例:メタンガス)を生成
・ 生成したバイオガスを燃料とする小型の発電機で発電を行い、導入建物の補助電源として活用
・ 発電機運転時の排熱を回収し、導入建物の給湯補助熱源として活用
【想定するメリット】
・ 建物外へ搬出する廃棄物量の低減
・ 生物由来の食品廃棄物をエネルギー源とするため、建物使用電力に起因するCO2発生量のカーボンニュートラルの観点での低減が可能
・ 建物内で食品廃棄物のネルギー転換を行うため、食品廃棄物の輸送に要するエネルギーの低減が可能
【将来】
・ さらなる小型化により、集合住宅や高齢者施設での導入も可能となる。