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「ゼロカーボン・チャレンジ2050」

東日本旅客鉄道株式会社

概要

● 当社は、本年5月に新たな環境長期目標「ゼロカーボン・チャレンジ2050」を策定しました。事業活動に多くのエネルギーを使用する鉄道事業者の使命として、2050年度の鉄道事業におけるCO2排出量「実質ゼロ」にチャレンジします。

● 具体的には、保有するエネルギーネットワーク「つくる~送る・ためる~使う」までのすべてのフェイズで新たな技術を積極的に導入し、CO2排出量削減にチャレンジします。

(1)「つくる」
再生可能エネルギーのさらなる整備推進
CO2フリー水素による発電

(2)「送る・ためる」
回生電力の貯蔵、活用
超電導き電ケーブルの導入

(3)「使う」
省エネ走行パターンの導入
省エネ性能を抜本的に向上した車両の技術開発
蓄電池車・燃料電池車の技術開発

(4)「その他」
CCUSの導入

説明

【JR東日本の「2050年度 CO2排出量ネットゼロ」に向けたチャレンジ】

鉄道は、運輸部門において輸送量当たりのCO2排出量が相対的に低く、環境に優しい輸送機関です。一方で、1日に約12,000本の列車を運転し、約1,790万人のお客さまにご利用いただく当社では、一般家庭約140万世帯分に相当する、年間約50億kWhの電力を列車・運行や駅、オフィスビルなどの電源として消費しています。多くのエネルギーを使用する鉄道事業者として、長期的にCO2排出量を削減していくことは使命であり、平均気温上昇「1.5度未満」の実現に貢献していくために、本年5月に新たな環境長期目標「ゼロカーボン・チャレンジ2050」を策定し、2050年度の鉄道事業におけるCO2排出量「実質ゼロ」にチャレンジします。

当社は、使用する電力を購入するほか、自ら保有する火力や水力の発電所・グループ会社とともに開発した再生可能エネルギープラントで発電し、自営電力網を活用して、送電しています。これら「つくる~送る・ためる~使う」までのエネルギーネットワークのすべてのフェイズで新たな技術を積極的に導入し、CO2排出量の削減を図ります。さらに、エネルギー供給事業者、メーカー、大学・研究機関等の外部と連携し、技術イノベーションを推進していきます。

以下、各フェイズにおいて導入の検討や共同研究を進めていく新たな技術に関するチャレンジ内容です。

1.「つくる」のチャレンジ
・メガソーラー、大型風力発電所など、再生可能エネルギーのさらなる新規案件開発に地域と協力して取り組み、消費電力における再生可能エネルギーの比率を高めます。今後、当社が継続して再生可能エネルギーを開発、確保するためには、電力会社との間での系統接続への同意取得も含め、開発に有望な地域の調査及び選定を進めることが課題です。

・自営の火力発電所において、CO2フリー水素による発電設備を導入し、脱炭素電源の供給に挑戦します。経産省の「次世代火力発電ロードマップ」によると水素専焼方式は2030年以降に技術確立され、その後、商用化されるまでに更に10年程度要するとされています。同ロードマップの実現に向けて、CO2フリー水素の大量生産及び供給に係るパイプラインなどのインフラ整備が課題となります。

2.「送る・ためる」のチャレンジ
・電車がブレーキをかけるときにモーターから発生する回生電力を貯蔵、活用する取組みを進めます。現在、いくつかの在来線用の変電所に回生電力貯蔵装置を導入しており、今後の導入拡大においては、装置のコンパクト化、大容量化、長寿命化などが課題です。

・変電所から架線への送電線に、超電導き電ケーブルを導入し、送電時の電力損失の大幅な削減に挑戦します。超電導状態を維持するための冷凍機等、線路沿線への関連設備の整備や、省エネが見込めるレベルまで冷却性能を向上させる必要があることが課題です。

3.「使う」のチャレンジ
・列車運転時の消費エネルギーを最小化する加速と減速のパターン(省エネ走行パターン)を開発し、路線ごとに導入します。

省エネ性能を抜本的に向上させた車両の技術開発に挑戦します。

長距離走行が可能な蓄電池車の技術開発、水素をエネルギーとして走行する燃料電池車の実用化に向けた技術開発に挑戦し、非電化区間の車両をこれらに置き換えていきます。勾配や積雪など線区条件が多岐にわたるため、当社の全ての路線へ導入を進めるうえでは、出力や走行距離、メンテナンス性等をクリアする必要があることが課題です。さらに、燃料電池車の実用化にあたっては、水素サプライチェーンの構築と普及に向け、社会全体で水素エネルギーを使う仕組みづくりが課題となります。

先進的な環境、エネルギー技術等を取り入れたまちづくりを推進し、様々な戦略の導入・実装を行っていきます。

4. その他
CO2の回収、貯蔵、カーボンリサイクルの導入に挑戦します。CO2の分離・回収に係る技術の実用化の他、貯蔵するための地層の調査、選定が課題となります。


当社はこれまでも、水力・太陽光・風力・バイオマスなどの発電を導入し、列車運行等で消費するエネルギーの約25%は再生可能エネルギーを使用しています。また、保有する車両の98%を省エネ車両に置き換えるなど、CO2排出量削減に取り組んできました。しかし、気候変動など地球環境問題は深刻化し、企業をはじめとするあらゆる主体がより一層の対策を行うことが急務となっています。

上記に挙げたさまざまな課題の解決および今回掲げた高い目標の達成に向け、従来の発想の枠にとらわれないイノベーションを牽引していきます。脱炭素社会の実現に向けて、グループ一体となって取り組んでまいります。

補足情報

● JR東日本ニュースリリース「2050年度のCO2排出量『ゼロ』を目指します」
https://www.jreast.co.jp/press/2020/20200512_ho02.pdf

● JR東日本グループ経営ビジョン「変革2027」
https://www.jreast.co.jp/investor/moveup/

● JR東日本グループサステナビリティレポート2019
https://www.jreast.co.jp/eco/report/2019.html

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