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地球温暖化問題への解決策を提供する化学産業

一般社団法人日本化学工業協会

概要

2017年5月22日に日本化学工業協会は、2050年およびそれ以降の地球温暖化対策に向け「地球温暖化問題への解決策を提供する化学産業としてのあるべき姿」を公表し、ソリューションプロバイダーとしての化学産業として、その実現に向けて以下の3つの観点から取り組んでいる。

① 原料の炭素循環
② プロセス、構造の転換
③ ライフサイクルを通したGHG削減。

また、これらの取り組みで培われた経験・技術等を海外に展開することで世界全体のGHG削減に貢献していく。

説明

ソリューションプロバイダーとしての化学産業は、上記「あるべき姿」の実現に向け、以下の項目につき、重点的に取り組む。

(1) 原料の炭素循環
炭素循環に繋がる原料の多様化を進め、化学製品のライフサイクルにおけるGHG排出量を最小限にする。この為、長期的な視点に立脚して、二酸化炭素の原料化(CCU)、バイオマスの原料利用、天然ガスの活用、メタンハイドレードの資源化等と同時に、炭素源としての廃棄物利用(廃プラスチック等)に必要となる技術の開発に取り組んでいくとともに、化石原料の高度化利用を徹底して進めていく。
これらの技術開発と併せ、バイオマス原料や廃棄物原料の収集や物流などの面でAIの活用を進め、化学プロセスに使用される炭素原料が効率的に集められるような取り組みも行う。

(2)エネルギー利用極小化へのプロセス、構造の転換
製造プロセスにおいて桁違いの省エネルギーを達成するための技術革新を進める。製造プロセス内で多くのエネルギーを消費する蒸留プロセスを中心に膜分離プロセスの開発を進める。また、高付加価値の機能性化学品に関しても、多品種少量生産に対応するためのフローリアクターやバイオ生成の開発を進めるとともに、新たな反応システムを搭載した輸送プロセスにおいて反応を実施するような画期的な手法の実現も目指す。
化石燃料の燃焼によるエネルギー比率の減少を目指し、電気エネルギーの熱エネルギーへの変換技術において工業的活用に向けた革新技術(抵抗加熱、マイクロ波加熱、誘導加熱、ヒートポンプ)の開発を進める。また、発熱と吸熱のプロセスの組み合わせや排熱活用によって効率的エネルギー使用を進めるため、地縁を活用した企業の枠を超えたエネルギー管理体制を構築する。加えて企業連携の取り組みとしては、コンビナートにおけるマテリアル有効利用の仕組み等を構築する。
これらと併行して、従来必要とされていた定期的な修繕等に費やされていたエネルギーの極小化を目指し、従来の発想を超えたプラント寿命予測等の技術の確立に向けたAIの活用や、多品種対応、運転切り替えや外乱対応などにおいて、プロセスのフィードフォワード制御実現のためのAI活用を進めていく。

(3)製品のライフサイクルを通したGHG排出削減
バリューチェーン全体のイノベーションにつながる新素材として高断熱材料、高潤滑材料などを実現する。また、高強度軽量素材(CFRP、CFRTP)の開発を進め、ユーザー産業に積極的に提案し、業界の枠を超えた協働体制を構築して、製品ライフサイクル全体でのGHGが極小化されることに貢献する。このため、ユーザーリクエストに対応するという従来のビジネスモデルのみならず、最終消費者の潜在的なニーズを先取りして製品メーカーに提案するビジネスモデルを確立し、そのビジネスモデルを活用しながら、ライフサイクル全体でのGHG削減につながる製品のデザインや使用シナリオ提案を化学産業から行っていく。これにより、バリューチェーンの構築に先取的役割を果たし、GHG削減貢献者としての地位を確立する。

(4)炭素循環社会の海外への展開
炭素循環社会の構築で培われた経験、技術、製品、ノウハウを海外に展開することで世界全体のGHG削減に貢献する。日本の技術とシステムがビジネスベースで新興国にも展開されるよう、二国間での対話や国際組織において、日本の技術とシステムが持続可能性にとって不可欠であることを周知展開していく。

日本化学工業協会は、上記の重点的取り組みに基づくアクションとして、次の各項目について着手していく。
① 化学産業会が総力を結集し、技術開発に向けたプログラム策定に産官学を挙げて取り組む。
② 海外での大幅なGHG削減につなげるため、わが国化学産業が有する技術的強みを、経済合理性をもって国際的に展開していくための国際組織への提案と体制構築を行う。
③ バリューチェーン全体の社会的イノベーションを起こすための業界の枠を超えた協働体制の構築や新たな社会システムを提案する。

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