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バナジウムレドックスフロー電池を採用した蓄電システムの開発

西松建設株式会社

VRFBの仕組み

外観デザイン

外観写真

図1. 本システムの外観デザインと内観

図2. 小規模産業用太陽光発電の売電収益を向上させる活用例

概要

再生可能エネルギーを最大限に活かすための蓄電システムを開発 -安全かつ安定性の高いバナジウムレドックスフロー電池(VRFB※)を採用した蓄電システム-
※Vanadium Redox Flow Batteryの略。

気候変動による近年の気象災害激化が、人的経済的に甚大な被害をもたらしている昨今、事業活動における脱炭素化の対応は企業の社会的責任として必要不可欠となっています。当社では、地球温暖化防止に貢献すべく「2030年度に事業活動から排出するすべてのCO2をネットゼロにする」という長期ビジョンを掲げ、CO2削減活動やCO2削減に資する技術開発を進めています。その一環の活動が、再生可能エネルギーの有効利用に寄与する蓄電システムの開発です。
2015年のパリ協定以来、国内外では再生可能エネルギー発電の積極導入が加速していますが、太陽光発電や風力発電などは発電量が天候に左右され安定した発電が難しいため、電力供給時の不安定性を解決する手段として蓄電池の採用が期待されています。現在当社では、短周期の出力変動吸収や長時間の電力貯蔵に最適なVRFBについて、試験システムでの基本性能の評価および蓄電池制御手法を開発しています。この技術を応用することにより、次世代のスマートグリッドやバーチャルパワープラント(VPP)に応用できるVRFBシステムが実現できることとなります。

説明

当社は、LEシステム株式会社(本社:福岡県久留米市、社長:佐藤純一)と共同で、太陽光発電等の再生可能エネルギーを最大限に活かすための蓄電システムを開発し、このたび実証試験を開始しました。

1. 背景
再生可能エネルギーのうち、太陽光発電や風力発電などは、発電量が天候に左右されるため、コントロールすることが難しいという弱点があります。そうした再生可能エネルギーの不安定性を解決する装置として期待されているのが蓄電池です。蓄電池については、コンパクト化や大容量化の検討が進められていますが、当社は蓄電池の中でも安全性が高く、再生可能エネルギーの変動吸収や大容量化に適し、長期間安定稼動するVRFBに着目しました。

2. 今回開発した蓄電システムの特長
このたび開発した蓄電システムは以下の特長があります。

① VRFB電池の採用により「安全性」「安定性」「拡張性」を実現
1)高い安全性
電解液は不燃性であり、電池の運転は常温で行われるため、発火や爆発などの危険性がありません。
2)長期安定性
耐熱等の必要が無いため電池本体の寿命が長く、約20年の電池設計が可能と言われています。また、他の蓄電池が充放電の回数に限りがあることに比べ、VRFBは充放電が無制限とされており、電解液は半永久的に使用可能なため、20年以降のコストダウンが可能と考えられます。
3)高い拡張性
 蓄電容量が電解液の量で決まるため、タンクの増設などで容易に蓄電容量を増やすことができます。

② ユニット化により設置と移動が簡単
制御部や電池セル部など蓄電池に必要な機能を一つのコンテナに集約することで、設置及び移動が容易にできます。(図1)

3. 実証試験の概要
VRFBの開発にあたり、2017年4月から2年をかけて開発実験を実施しました。3kWhのVRFBシステムと弊社技術研究所にある既設太陽光発電と連携させ、負荷をかけた状態で放充電を繰り返した性能評価により、システムの基礎となる蓄電性能を確保できることが確認されました。現在は、実用規模の蓄電容量に拡大した20kWhのVRFBシステムと出力8kWの太陽光発電システムの連携により、製品化に向け蓄電効率や利便性、メンテナンス性、耐久性の実証を2019年4月から進めています。

【評価項目】
① VRFBの運転制御の確認
② 負荷変動によるVRFBの過電流耐量の特性確認
③ 太陽光発電の変動する発電量に対する変動調整にかかる運転制御の確認
④ VRFBの各種効率の確認

4. 今後の展開
当社は、本システムの改良を重ね、再生可能エネルギーの電力需給に応じた蓄電システムを確立し、スマート・グリッド社会に対応した地域分散型エネルギーシステムを構築することで、低炭素社会の実現に貢献してまいります。(図2参照)

連携先

LEシステム株式会社

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