節水・省エネ商品による脱炭素社会実現への貢献
TOTO株式会社
概要
TOTOグループでは、2018年4月に中期経営計画「TOTO WILL2022」とともに、その推進エンジンとなる「TOTOグローバル環境ビジョン」を見直しました。このビジョンの推進を強化することで、経営とCSRのさらなる一体化を図り、企業価値向上を目指しています。
また、気候変動問題を社会が直面する重要課題の一つとして認識しており、この「TOTOグローバル環境ビジョン」のもと、2050年までの長期視点で地球規模の脱炭素社会の実現に取り組んでいます。
TOTOグループの商品には、ライフサイクルが長いという特徴があり、商品ライフサイクルにおけるCO2排出量は、『使用段階』が93%を占めます。そこで、使用段階におけるCO2排出量の削減(ネット・ゼロへの貢献、 適応・レジリエンス等)や節水・省エネ商品の売上比率の向上によるCO2削減を課題と捉え、主要商品である便器において、“より少ない水量で確実に洗浄する技術の実装”と“グローバルでの普及展開”にチャレンジします。一方、『製造段階』では、事業の成長に伴いCO2排出量が年々増加傾向にあることを課題と捉え、事業活動におけるエネルギー消費量の最小化を進めるとともに、TOTOグループ全体で再生可能エネルギーを積極的に導入するなど、長期的な事業成長も考慮しつつ、ネット・ゼロの実現に向けたCO2排出量の削減にチャレンジします。さらに、長期視点で地球規模の脱炭素社会の実現を目指し、他社連携や産学官連携を活用した固体酸化物形燃料電池(SOFC)の商品化・実用化や混合粉末型光触媒シートの開発を行っていきます。
説明
1. 商品使用時の水使用量およびCO2排出量の削減
近年の世界人口の増加、経済の発展、気候変動などによって、人ひとりが一年間で使うことができる水の量は、2050年までに2010年の4分の3まで減少すると予測されています。また、トイレや浴室、キッチン、洗面所など水まわりでの節水・節湯はCO2削減にもつながります。なぜなら、水を使用するためには、浄水場や下水処理場、各家庭への送水において、多くのポンプが使用され、電気を主としたエネルギーが使われるからです。さらに、お湯を使用するためには、加熱のためのエネルギーが必要となり、より多くのCO2が発生します。
TOTOグループの商品はライフサイクルが長く、『使用段階』におけるCO2排出量が93%を占めるという特性があります。そこでTOTOグループでは、節水・省エネ効果の高い商品を開発し、グローバルに普及させることで、世界の水問題に貢献するとともに、商品ライフサイクルにおけるCO2排出量の削減(ネット・ゼロへの貢献、 適応・レジリエンス等)に取り組んでいます。
その指標として、2005年度当時の性能をもつ商品を普及し続けた場合と比較して、2022年度で水使用量は11億㎥削減、CO2排出削減量は370万t削減する目標を掲げています。なお、2018年度は、水使用量は8.6億㎥の削減、CO2排出削減量は323万tの削減となりました。
節水・省エネ効果の高い商品を開発し、グローバルに普及させるにあたっては、下記の観点から課題を検討し、チャレンジしています。
a) 商品の性能進化: 1台あたりの節水・省エネ性能の向上によるCO2削減
【技術等の開発】 節水便器
便器における洗浄には、汚物を便器から「排出」することだけではなく、排水管内を「搬送」する性能が必要であり、その2つの性能を少ない水量で確実に発揮するのが、渦状に水を流す「トルネード洗浄」です。一方で、維持管理の観点から、清掃性や清潔性も便器の重要な要素であると考え、「ふちなし形状」と呼ばれる清掃しやすい形状にするとともに、便器内面にナノレベルの平滑さもった純度の高いガラス層を焼成と同時に形成させる「セフィオンテクト」と呼ばれる超平滑技術を開発することで、4.8Lという少ない洗浄水量にもかかわらず、確実な洗浄と清掃性を兼ね備えた便器を実現しました。
上記技術に加え、内蔵タンクの水を加圧した水流と水道からの水流とを最適に組み合わせた洗浄方式「ハイブリッドエコロジーシステム」を開発することにより、水道の水圧に影響を受けることなく3.8Lというさらに少ない水量での確実な洗浄を実現しました。この技術により、大きなタンクを備えることなく、低いシルエットのデザイン性の高い節水便器を商品化するとともにグローバルに展開していきます。
【技術等の開発】 節水シャワー
前述のように、CO2削減において水よりも大きな効果を発揮するのがお湯の削減です。しかし、シャワーにおいて単純に流量を少なくすることは、浴び心地を低下させることにつながりやすく、しかも、それは取り付ける地域の水圧にも大きく左右されます。
そのため、流水経路に複数の渦を発生させることにより、大粒の水玉を揺動させながら勢いよく吐水させる独自のシャワーノズルを開発しました。上記技術により、低水圧でも適度な刺激のある、優れた浴び心地のシャワーであるにもかかわらず、従来よりも35%の節水が実現しました。この技術を「コンフォートウェーブシャワー」として商品化するとともにグローバルに展開していきます。
b) 節水・省エネ商品の販売強化:節水・省エネ商品の売上比率の改善によるCO2削減
TOTOグループでは、a) 商品の性能進化だけではなく、それらの節水・省エネ商品を普及させることにも注力しています。
【普及・実装】 節水便器
衛生陶器は文字通り陶器であり焼き物であるため、焼成前後で寸法が大きく収縮するだけではなく、その収縮率は部位によっても変わります。しかも上記「トルネード洗浄」ならびに「ふちなし形状」は一般的な便器と比較して複雑な形状をしているため、生産においても原料の調合から成型、乾燥、焼成と高い技術が必要となります。また、「セフィオンテクト」のような表面超平滑技術も同様に、施釉と呼ばれる焼成前の釉薬の吹き付け作業に高い技術が要求されます。TOTOでは、この節水便器をグローバルに普及していくため、日本だけではなく、海外に自社工場を設立して生産を行なうとともに、毎年各国の工場から代表者が集い、成型や施釉の技術を競う「衛陶技能選手権」を開催することで、技術の研鑽と展開を図っています。また、品揃えにおいても、主力商品の洗浄水量を全て4.8L以下とすることで、節水便器の普及拡大を図っています。このような取り組みにより、TOTOの大便器の出荷数のうち、洗浄水量4.8L以下の節水便器が占める割合は年々向上し、2018年度には79%に達しました。そして今後も引き続き節水便器出荷比率の向上と普及に取り組んでいきます。
【普及・実装】 瞬間式ウォシュレット
節水便器や節水シャワーのほか、温水洗浄便座「ウォシュレット」についても省エネタイプへの切り替えを進めています。ウォシュレットには、タンクに貯めた水を常にヒーターで保温する「貯湯式」と、使用の度に使う量の水だけを瞬間的に加熱する「瞬間式」があります。瞬間式は、旧来の技術である貯湯式と比較してエネルギー消費が少なくて済む反面、ヒーターや水流の制御に高い技術力が必要です。この価値を積極的に伝え、瞬間式ウォシュレットへの切り替えを進めるとともに、今後のグローバルでの販売戦略の中で、瞬間式ウォシュレットを海外にも普及させていきます。
c) 各種係数変化:電力・水・湯の排出係数の改善によるCO2削減
社会インフラの変化として、再生可能エネルギーの普及により電力排出係数の低下が見込まれています。それに伴い、上下水道で消費する電力の低炭素化によって水のCO2換算係数が低下します。現在、家庭用給湯エネルギーの大部分を占める都市ガスやLPGガス、石油からエコキュートへの電化や都市ガスの再生可能エネルギー化などの動きから、TOTO商品と相乗効果での脱炭素社会への貢献を図ります。
2. 事業所からのCO2総排出量の削減
TOTOグループは2019年に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)からの提言に賛同し、2030年までに事業所からのCO2総排出量のピークアウトを実現し、その後もさらなる削減を行うことを目標としています。
TOTOの主力商品である衛生陶器の製造工場では、焼成窯など多くのエネルギーを使用する設備が存在し、事業成長とともにCO2総排出量も年々増加傾向にあります。そこで、環境に配慮したグリーンファクトリー化により、事業活動におけるエネルギー消費量の最小化を進めるとともに、TOTOグループ全体で再生可能エネルギーを積極的に導入し、2030年までにCO2総排出量のピークアウトを実現します。
【普及・実装】 最先端の省エネ設備の導入
大便器、小便器などの衛生陶器の製造工程で焼成窯が最もエネルギーを消費することを課題と捉え、排熱を回収し自己再生する高効率のファイバー窯を導入しています。排熱を回収、再利用することで、従来のレンガ式焼成窯と比較して約71%の省エネ効果を達成しています。
同様に、エネルギー消費が大きいことに課題のある成型室では、四季を通じて温度や湿度を一定に保つ必要があるため、省エネ性能の高い最新式の空調設備を導入しています。冷房の排熱を回収して暖房に利用したり、負荷状況にあわせて空調を個別制御したりするなど、従来と比較して省エネ・節電効果を高めています。さらに、屋根や外壁には断熱性の高い材料を採用し、空調負荷が大きなエリアを外気の影響を受けにくい建物の中央に配するなど、レイアウトにも配慮することで、空調設備の能力を最大限に発揮できるようにしています。
【普及・実装】 燃料転換の推進
最先端の省エネ設備の導入と併せて、事業活動で消費する燃料をCO2排出の少ない燃料や電気へと転換を進めています。具体的には衛生陶器の生産設備(焼成炉、ボイラー、冷温水器)の燃料をLPガスから都市ガスに転換することや、ホーロー製品の鋳造工程における溶解設備のエネルギー源をコークスから電気に転換しています。
3. 他社連携・産学官連携による商品化・実用化
TOTOグループでは、他社連携や産学官連携も実施し、脱炭素社会の実現を目指したチャレンジを行っています。小規模でも高効率な発電システムとして固体酸化物形燃料電池(SOFC)の商品化・実用化や、安価な水素の大規模供給のため、人工光合成による水素製造の実用化を加速させる混合粉末型光触媒シートの開発にチャレンジしています。
【技術等の開発】 二酸化炭素原料化基幹化学品製造プロセス技術開発(人工光合成プロジェクト)
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)、東京大学、TOTOは、NEDOの「人工光合成プロジェクト」において、太陽エネルギーを利用した光触媒による水からの水素製造(人工光合成の一種)で、2種類の粉末状の光触媒を用いた混合粉末型光触媒シートを開発し、太陽エネルギー変換効率1.1%を達成しています。さらに、同シートのコンセプトをもとに、大量生産が可能なスクリーン印刷による10cm角の塗布型化にも成功しています。開発したシートは非常にシンプルな構造で、大面積化と低コスト化に適しており、安価な水素を大規模に供給できる可能性を持っています。TOTOは、人工光合成プロジェクトの一員として、今後も、二酸化炭素排出量の削減に貢献可能な革新的技術の進化をはかり、持続可能な社会の実現に向けて貢献していきます。
【技術等の開発】 固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell、以下SOFC)
SOFCは、小規模でも高効率な発電システムとして家庭用、業務用、産業用など様々な領域において、エネルギー・環境問題の解決策の一つとして期待されています。しかし、セラミックスを中心材料とした高温の反応性雰囲気での動作など技術的難易度の高い開発であり、低コスト化と高耐久化が商品化・実用化に向けた主な課題となっています。寿命評価やその対応技術の研究開発には長時間を要し、事業化に至るまでには相応の労力とコストが必要であるため、森村グループ4社(株式会社ノリタケカンパニーリミテド、TOTO株式会社、日本ガイシ株式会社、日本特殊陶業株式会社)は、4社による合弁会社「森村SOFCテクノロジー株式会社」の事業を開始しています。
合弁会社では、各社がこれまで培ってきたSOFCに関する技術・ノウハウなどを持ち寄り、それぞれの有する経営資源を融合することで早急な商品化の実現を目指します。
連携先
【技術等の開発】
二酸化炭素原料化基幹化学品製造プロセス技術開発(人工光合成プロジェクト)
参画機関: 国際石油開発帝石(株)、住友化学(株)、TOTO(株)、(一財)ファインセラミックスセンター、富士フイルム(株)、三井化学(株)、三菱化学(株)(五十音順)
【技術等の開発】
固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell、以下SOFC)
森村グループ4社((株)ノリタケカンパニーリミテド、TOTO(株)、日本ガイシ(株)、日本特殊陶業(株))
補足情報
【概要】
・ 統合報告書
https://jp.toto.com/company/profile/library/pdf/report2019.pdf
・ 水と地球の、あしたのために
https://jp.toto.com/greenchallenge/value/q07.htm
【商品】
・ 節水トイレ(大便器・小便器)
https://jp.toto.com/company/csr/environment/water/products.htm
・ 浴室
https://jp.toto.com/company/csr/environment/warming/products.htm
・ 二酸化炭素原料化基幹化学品製造プロセス技術開発(人工光合成プロジェクト)
https://jp.toto.com/company/press/2016/03/10_002092.htm
・ 固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell、以下SOFC)
https://jp.toto.com/company/press/2019/03/04_005705.htm
https://jp.toto.com/company/press/2019/12/03_009224.htm