排ガス由来低濃度CO2の有用化製品への直接変換
東ソー株式会社
概要
火力発電から排出するCO2は、国内CO2排気量の3割を占めているが、2050年においてもベースロード電源として重要とされている。そのため、2050年頃を見据えた温室効果ガスの抜本的な排出削減を達成するための技術開発が強く求められている。本チャレンジでは、火力発電所排気ガス中の低濃度、低品質CO2を精製や濃縮などの前処理を経ない「DAC(Direct Air Capture)」によって、日用製品や工業製品に多く利用されており、今後も需要の拡大が見込まれているポリウレタン樹脂の原料に直接変換する「革新的CO2有効利用技術(革新的CCU)」を開発し、火力発電所から大気に放出するCO2量を大幅に削減する。
説明
国内の主要ベースロード電源の一つとして、今後も火力発電は重要と考えられている。一方、火力発電所から排出されるCO2量は、国内のトータルCO2排出量の3割を占めており、火力発電所から排出されるCO2量を抜本的に削減するための技術開発が強く求められている。CO2排出量を抜本的に削減するためには、火力発電所からのCO2排出量を削減するのみでなく、CO2を積極的に有用化物質へ利用する技術(CCU)も併せて開発することが重要である。
一般的に、CO2を積極的に有用化物質へ利用する技術(CCU)では、反応を効率よく進めるため、別途CO2分離・回収システムで精製・濃縮したCO2を用いられている。本チャレンジでは、火力発電所から排出するCO2を特別な処理することなく、そのまま有用な製品への変換をおこない、プロセス削減によるCO2コストの削減に加えてCO2の精製・濃縮時に発生する更なるCO2の削減も可能となる、「革新的CO2有効利用技術(革新的CCU)」の開発をめざす。
火力発電所から発生する排気ガス中の低濃度・低品質CO2を用い、精製や濃縮などの前処理を経ない「DAC(Direct Air Capture)」によって、日用製品や工業製品など多く工業製品に利用されており、今後も大幅な需要拡大が見込まれているポリウレタン樹脂の原料であるイソシアネートを合成する技術を開発する。
イソシアネートは、工業的にはホスゲン(COCl2)とアミン化合物を原料にして製造が行われている。近年、産業技術総合研究所(産総研)では、高圧(50気圧)、高濃度(100%)のCO2とアミン化合物からイソシアネートを合成する技術を見出している。本チャンレンジでは、この産総研の技術に着目し、この技術に火力発電所の排ガス中に含まれるCO2を直接用いることで、ウレタン原料としてのイソシアネートの合成を目指す。火力発電所から排出されるCO2は低圧、低濃度のため(1気圧、15~20%純度)、どのような反応の設定を行うかが技術課題である。現在、産総研と協力して検討を進めており、CO2とアミン化合物からカルバメート誘導体を経て、イソシアネート合成につなげていくため、種々の反応設定に関する検討を国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクト「未踏チャレンジ2050」に参画して、鋭意実施中である。
本技術が実用化し、世界のポリウレタン原料がすべて本技術を用いて合成をされれば、2050年には世界で540万トンのCO2削減につながると推算している。
連携先
産業技術総合研究所