石灰石焼成炉より排出される二酸化炭素の回収分離と固定
デンカ株式会社
概要
1. 背景
当社は、石灰石を出発原料として様々な製品を製造し、その過程でCO2 を放出している。温室効果ガス(CO2)の排出を削減するとともに、新たな原料としての活用を目指し、中長期的視点で挑戦的な目標を立てて対応を開始している。
2. チャレンジの概要
排ガス中からCO2 を分離回収し、さらに固定および有効活用化することにより、大気中への放出量の削減を図る。
現在はCO2 分離回収技術として化学吸収法、物理吸収法、および膜分離法を検討しており、最適なプロセスの導入を目指す。
また、分離回収されたCO2 については、コンクリートに吸収させることにより固定化するとともに有効活用する。
3. 今後の予定
分離回収から固定化までの技術を構築し、中長期の目標達成に向け実装を進める。
説明
1. 目標
当社は、以下の挑戦的な目標を立てている。
中期目標:2030 年度の温室効果ガス排出量を2013 年度に対して26%削減する。
長期目標:2050 年度までに実質の温室効果ガス排出量を2013 年度に対して85%削減する。
今回の提案は、上記中長期目標を達成するために必要、且つチャレンジングな技術開発案件の位置づけである。
2. 検討工程
採掘した石灰石は、主に焼成の段階でCO2 を発生させている。今回のCO2 削減を検討する工程は以下の通りである。
1) 既存の焼成工程で発生する排ガスからCO2 を分離回収する。
2) 分離回収したCO2 をコンクリート製品に吸収固定させる新規プロセス。
3. 課題と対応方針
主要な課題としては、以下が挙げられる。
1)CO2 の分離回収について
① CO2 の分離回収技術
現在開発されている分離回収技術は化学吸収、物理吸収、膜分離技術等である。これらをベースに当社のプロセスに適合した分離
回収技術の開発を進める。また、排出ガス中に含まれる不純物は連続安定操業上の大きな障害となることが予想される。また、回収されたCO2 の活用の
適用性を広げるためにも排ガスの精製工程を確立する。
② 焼成炉の負荷変動に追従できる技術
焼成炉の操業状況によりCO2 発生量は大きく変動する。安定的且つ高効率にCO2 を回収するために、実操業の負荷
に対する追従性が大きな課題である。
2)CO2 の固定について
③ CO2 の吸収固定化
回収されたCO2 を吸収固定化したコンクリート製品を安定生産するため、材料(特殊混和材)および新たな設備設計を進める。CO2吸収の効率性、生産性および製品安定性が課題となる。
以上の課題を解決し、CO2 の分離回収、固定化、活用効率およびエネルギー効率などを総合的に評価し、CO2 放出削減を進める。