EN

森林資源活用領域の拡大と「森林グランドサイクル®」構築による地球環境保全への貢献

株式会社竹中工務店

概要

「木のイノベーションで森とまちの未来をつくる」のミッションのもと、市街地においてこれまで難しかった中高層木造建築を実現し、無機質な街へ木のぬくもりを与えるとともに、新たな木材活用領域を創出し、建築における炭素固定、CO₂吸収源である森林資源循環を促進する取組を行っている。これは単に木材利用量の拡大のみを意図するものではなく、山元他ステークホルダーと連携し、持続可能な林業経営・地域産業の活性化を図るなど、森林資源と社会経済の大きな循環である「森林グランドサイクル®」の構築に向けて、サステナブル社会の実現を目指すものである。

【今後の取組】
・木造技術開発の推進
・木造プロジェクトを推進し件数を拡大
・木材調達において新たな商流にチャレンジ
・木材利用に係るステークホルダーと連携、相互理解深耕

説明

■ 背景
日本国土の7割を占める森林はパリ協定の排出削減目標におけるCO₂吸収源に指定され、かつ土壌保全等の多面的機能が重要視されている。一方都市化・地域の過疎化の進展等により、森林を支えてきた林業・地域経済が衰退し、荒廃した森林による災害リスクも顕在化している。

国内木材需要の約4割を占める建築分野において木造・木質化を推進することは、森林の資源循環、多面的機能や地域経済の活性化に大きく貢献する。

■ 竹中工務店の取組
木造建築は地震と火災に対する懸念から大きな規制が課されてきたが、当社は都市部での中高層木造建築実現を商機と捉え、中高層建物に適用可能な耐火木造技術の開発へ着手、2013年以降、都市部において10件の耐火木造建築を実現してきた。

また、その技術を活用し、「森林グランドサイクル®」の構築に向けた活動を実践している。これは、「木を植えて、育てて、伐って、また植える」という森林サイクルに留まらず、「木材を使うことで、都市に潤い等の付加価値をもたらし、林産地の地域経済が活性化し、さらに木材活用が促される」ことを意味している。
以下(1)(2)で詳細を説明する。

(1)木造技術の開発による「都市木造」の拡大

木造建築は火災に弱く、戦後、我が国では厳しい法規制により都市部での大規模な木造建築が困難な時期が続いていた。

当社は、従来は難しかった「中高層木造建築」という木材活用における新領域を可能とする技術開発に取組んだ。その成果である耐火集成木材「燃エンウッド®」、CLT(直交集成板)利用技術、CLTやLVL(単板積層材)による耐震補強技術「T-FoRest®」シリーズ等を活用して、18件の都市木造(新築・改修)を実現した。これにより、充分に活用されていない国産木材の利用促進に寄与すると共に「都市木造」という新たな市場を開拓した。

耐火集成木材「燃エンウッド®」とは、1998年に開発着手し様々な試行を重ね完成した、国産木材とモルタルによる3層構造の柱・梁部材。2020年2月現在、9件の適用プロジェクトが完成している。継続的な開発により様々なラインナップを創出している。上から14層を木造とすることができる2時間耐火仕様、角型・丸柱仕様、屋外仕様、鉄筋挿入集成材により大スパンの梁を可能とする仕様などがある。様々な木造空間を実現できるため、今後の木材利用機会につながるものと考える。

尚、都市木造の普及拡大のため、最も適用実績の多い1時間耐火仕様技術についてはメーカーを通してオープン化しており、当社が関与しないプロジェクトにおいても「1時間耐火仕様燃エンウッド」を活用することができる。

(2)「森林グランドサイクル®」活動による環境・社会・経済への統合的な貢献

「森林グランドサイクル®」に向けた以下活動により、木材利用促進に寄与している。

・木材利用により、建築内部空間に安らぎを創出し、都市景観へ潤いを与える。
・林業家へ適正利益を還元する新たな商流の構築、また、今後縮小していく戸建て住宅に代わる新市場「都市木造」の醸成により、持続可能な林業経営に貢献。
・木造・木質建築、木材の活用促進のための啓発活動

施工中・竣工後の木造案件見学会、各種展示会・セミナー等での技術PRの他、竹中大工道具館(神戸市)での展示等、多くの人に「木」を知り、親しんでもらうための様々な活動を展開している。

■ 具体事例
「PARK WOOD高森」新築プロジェクトにおける実施内容

【建物概要】
完成:2019年2月
建築地:宮城県仙台市
用途:集合住宅
規模:地上10階、延床面積 3,605㎡
床と壁にCLTを、柱に「燃エンウッド®」を使用

【伐採跡地へ植樹を行い適切な森林管理に参画】
建物に使用した木の伐採跡地1,300㎡に対し、当社関係者15名が参加する形で植樹を行い、次期50年にわたる森林サイクルを継続した。

【新たな商流の実現】
大規模な建築工事では元請け会社が直接木材を購入することは稀だが、当社が林業家から直接丸太を購入することにより、林業家への利益還元を実現した。流通経路を単純化することで木材のトレーサビリティ・品質を確保でき、林業家にとっては自らの木の活用所在を把握できることにより生産活動の励みとすることができた。
また、次工程のCLT加工業者と木取り計画等について連携し、木材利用の効率化を図った。
これら経済性や関係者のモチベーション向上によって、今後の木材活用の持続・拡大に寄与した。

【地球環境保全への寄与】
・建物への木材使用量 約200㎥ →CO₂固定約207t
・伐採跡地1,300㎡へ440本の苗木を植樹し、森林を更新、活性化
・乾式で軽量な木材の活用により、RC造の場合に比べて工期を約3か月短縮

■ 今後の取組
プロジェクト件数の拡大とともに、個々のプロジェクトにおいて以下取組を行う。

・プロジェクト件数目標
2020年:11件以上、 2021年:13件以上、 2022年:15件以上

・木造技術の開発を推進し、多様な木造空間、建種を可能とするとともに、建設コストの低減を図る。
・木材調達において新たな商流にチャレンジ
木材のトレーサビリティ、加工に至る品質を確保するとともに、安定的に木材を調達する。また、山元へ伐採後の再造林を可能とする適正利益を還元し、山林保全に寄与する。
・木材利用に係るステークホルダーと連携、相互理解深耕

本活動の更なる拡大を目指し、ステークホルダーと連携を図る。

連携先

連携構成はプロジェクトにより変わり、一定ではない。

上記具体事例「PARK WOOD高森」では、建築主の三菱地所、木材供給者の田島山業、木材加工の山佐木材等と連携した。

補足情報

■ 竹中工務店ホームページ

「"都市木造"への取り組み」
https://www.takenaka.co.jp/solution/needs/design/index.html

「木造・木質建築」
https://www.takenaka.co.jp/mokuzou-mokushitu/index.html

「⽊のイノベーションで森とまちの未来をつくる2」
https://www.takenaka.co.jp/solution/needs/design/index.html

■ ウッドデザイン賞2019 最優秀賞(農林水産大臣賞)

「日本初となる中高層木造ハイブリッド建築を実現する技術の実証」
https://www.wooddesign.jp/pdf/wooddesign2019_release20191120.pdf

■ キノマチウエブ
https://kinomachi.jp/

類似事例

2モータシステム用パワーユニット 「4GL-IPU」

三菱電機株式会社

> 詳細を見る

AI/IoTを活用した分散電源(VPP)のデマンドレスポンス(DR)対応

日本電気株式会社

> 詳細を見る

AI制御で最大50%の基地局電力使用量を削減

KDDI株式会社

> 詳細を見る

BEMS (Building Energy Management System)

鹿島建設株式会社

> 詳細を見る

CO₂を分離するサブナノセラミック膜の開発

日本ガイシ株式会社

> 詳細を見る